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居宅ケアマネから見る『地域包括ケアシステム』
環境整備
居宅ケアマネから見る『地域包括ケアシステム』
川村義肢株式会社 暮しいきいき館 主任介護支援専門員 宮部綾乃
2015-05-01
地域で暮らせる医療と介護の環境づくりに、日本中の各地域で「地域包括ケアシステム」の形作りが始まっています。postgresグループ大東本社(大阪府大東市)に「暮しいきいき館」(居宅介護支援事業所)があるのをご存知でしょうか。利用者の意思及び人格を尊重し、利用者に提供される居宅サービス等をプランニングする業務は介護現場の要となる仕事といえるでしょう。介護現場を周知するケアマネジャーから見える『地域包括ケアシステム』とは何か。沢山の気づきは未来の包括ケアへの提言と変遷していくことを願っています。
「地域包括ケアシステム」とは
私は自宅に住む利用者のケアプランを立てる、いわゆる居宅ケアマネです。居宅ケアマネにとって、いま『地域包括ケアシステム』への動きがどのように見えているかをお伝えします。
昨年6月に『医療・介護総合確保推進法』の関連法案が可決され、団塊世代のすべてが75歳以上となる2025年をめどに構築を目指す、地域包括ケアシステムへの動きが加速しています。
地域の特性に応じて、医療や介護、生活サービスなどが、切れ目なくおおむね30分圏内(中学校区)で提供できるような体制を『地域包括ケアシステム』と呼びます。
国は、重度な要介護状態になっても、住み慣れた自宅で『自分らしい生活』を人生の最後まで送り続けることができることを目指し『地域包括ケアシステム』を実現する、と宣言しています。
システム構築における重要な要素は「介護」「医療」「予防」「生活支援」そして「住まい」だと考えられています。
地域ケア包括システム
地域の病棟化
医療において、急性期の治療を終えた患者(利用者)が、早々に自宅のベッドに戻されるという流れができ、自宅に戻ってから慢性疾患の治療やリハビリが提供されること、今まで回復期や維持期の病棟の役割を自宅を含む地域が果たす、つまり『地域を病棟の一つと考える』という、大きな変革をもたらすことになりました。
既設の病院を中心に、訪問看護やリハビリといった介護サービスへの展開を図り、地域を医療・介護の両面から法人でまるごとサポートしようという、病院から地域へという動きが活発です。
参考:ある医療法人の医療と介護サービスの展開
欠かせない医療と介護の連携
医療ニーズが年齢とともに高まる高齢者にとって、病院から自宅、自宅から病院に、スムーズにその人の医療・心身等の情報がパスされていくことが重要です。地域にある限られた資源を効率的、効果的に活用するためにも、それぞれの専門職自らがその役割を明らかにし、お互いの理解を深める努力をする必要があります。
基礎資格が介護福祉士や社会福祉士といった福祉系のケアマネが8割を占める居宅ケアマネにとって、主治医をはじめとする医療職との「連携」はまだまだ敷居が高く感じるところで、いかにその敷居を取り払い「連携」を深めるかは、『地域包括ケアシステム』の構築にとって大きな課題の一つです。
連携
「住まい」と「住まい方」
かつて、日本の高度成長期に整備された住宅地やマンモス団地群は、現在空き家や高齢化が深刻な課題になっていることをニュースなどでお聞きになったことがあるでしょう。
段差の多い日本の住宅で、高齢になっても住み続けるには手すりや、トイレの洋式化、段差の改修などのリフォーム工事が必要であることが多いのですが、大金をかけて工事をしても、家を引き継ぐ子ども世帯が戻ってくるわけではなく、老夫婦や独居となった高齢者世帯にとって、広い居住スペースはかえって負担になることも少なくありません。
最近、高齢者の住まいの選択肢の一つとして『サービスつき高齢者専用住宅』略して「サ高住」と呼ばれる住宅があります。
多くは同じ建物にヘルパー事業所やデイサービスがあり、そこを利用することもできるのですが、介護保険上「自宅」という扱いで、その事業所以外の介護サービスの利用もできる場合があります。個室が基本で、20平米程度の広さのものが多いようです。食堂や浴室などは共有であることが多いのですが、簡単なミニキッチンや浴室が備えられた部屋を用意した施設もあります。料金も入居一時金なし、1ヶ月15万円程度から、と在宅での生活と変わらない負担で入居できる施設も増えてきており、利用者としては、自宅か特養かの二者択一から、選択の幅が増えたことは望ましいことだと思われます。
地域包括ケアシステムにおいては、点在する自宅へのサービス提供よりも、一棟の中にサービスを必要とする人がまとまっている方が提供効率がよい、とも考えられており、まだしばらくは、サ高住は増えていくことが予想できます。
『サービスつき高齢者専用住宅』
高齢者の生活を支える「生活支援サービス」
高齢者にとっては単に自宅で医療サービスを受けて病気を治療すれば、万事OKというわけではありません。
生活支援で必要とされるサービスは、認知症高齢者の見守りや安否確認から、買い物代行や電灯の交換といったものなど、独居や核家族、老老世帯、認々世帯(認知症の人が認知症の介護をしている)といった個人のライフスタイルの多様化からニーズが多岐にわたっています。
介護保険のヘルパーでは認められていない行為も多く、以前からあるサービス(個人商店による配達や取り付けサービスなど)の見直しや、地域性や個人のニーズにあった新しいサービスの創出も必要です。
また、そのサービスを担う人材として、同じ地域に住む住民ボランティア、子育て中の女性や健康な高齢者なども活用する必要があるといわれています。
社会保障費から報酬が支払われるプロのヘルパーサービスは、その専門性を生かした業務に集中し、どこの家でも当たりまえに行われているような家事の援助は、主婦などの経験を生かしてと考えられ、ボランティアの育成などが市町村主導で進められています。
ケアマネとして気になるのは、今まで職責として守られてきた個人情報の守秘が、近所の互助のなかで、どうやって担保されていくのかという点ですが、今のところそのことについての議論より、サービス提供者の確保に注力されているようです。
これからのケアプランは、医療・介護といった公的サービスだけではなく、「その人らしい自立した生活」を実現していくために、多種多様なサービスを組み合わせて、個別性のあるケアプランを作成できているのか、ということが今まで以上に求められてくるようになるだろうと考えられます。
生活支援サービス
根拠と結果を求められるケアプラン
地域包括ケアシステムの構築は、限られた社会保障費の効率的な活用と効果を目指していることは間違いなく、ケアマネが立てるケアプランについてもそのサービスを位置づける「根拠」と、計画の「有効性」については、客観性を持って計り、適切なPDCAをまわしていく必要があるといわれています。
利用者の動作や身体機能を知っている理学療法士等には、現状の身体機能評価とともに、必要な動作の分析とリスクや改善の目標、期間を提示していただくことで、ケアプラン作成時に適切な『根拠』に則った目標決定プロセスができるものと考えます。
そのためにはケアマネ側にも、理学療法士等に利用者の生活スタイルや暮らしぶり、嗜好や希望、住んでいる地域の資源なども情報として提供していく必要があります。リハビリ会議やサービス担当者会議などを通じて、効率的に情報交換ができれば理想だと考えます。
そのようにして、適時その人にあったリハビリのスタッフや機会を集中していくことで、利用者の自立を促し、在宅生活の限界を引きあげていくことができるか否かが『地域包括ケアシステム』成功の大きな鍵となります。
次回は、私が勤める地域での「予防」への取り組みと「地域でのシステム作り」の動きをご紹介したいと思います。
地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム開催
6月13日(土)、postgresグループ主催「地域包括ケアの講演会・シンポジウム」を開催します。
10年後の2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、4人に1人が75歳以上という超高齢社会をむかえます。地域で暮らせる医療と介護の環境づくりに、日本中の市町村で「地域包括ケアシステム」の形作りが始まっています。
このたび、私たちの本社がある大東市で「地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム」を開催することとなりました。これからの未来をみなさんで一緒に考えてみませんか?地域包括ケアに関心のある方ならどなたでもご参加いただけます。
日時 2015年6月13日(土) 13:00-17:00
場所 大東市総合文化センター サーティホール 大ホール
大阪府大東市新町13-30
JR学研都市線 住道(すみのどう)駅より500m
講師 酒向 正春先生 (世田谷記念病院 副院長)
鶴田 真也先生 (厚生労働省 老健局 老人保健課 課長補佐)
内容 ◆特別講演「あきらめない力 ~攻める 脳リハビリ医が挑む 希望の人間回復~」
◆基調講演「これからの地域包括ケアシステムとは」(仮題)
◆シンポジウム 「これからの地域包括ケアシステムを考える
~地域資源となるそれぞれの立場から~」
募集人数 400名
参加費用 2,000円
下記お申込みページよりお手続きお願い致します。
https://www.p-supply.co.jp/app/webroot/moushikomi2/branch_cut.html
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