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パシフィックニュース

VOCAとともに 夢叶えよう! 連載2

AAC(コミュニケーション)

VOCAとともに 夢叶えよう! 連載2

?叶えたい事は?私も社会の一員?

圓井美貴子(徳島県肢体不自由児者父母の会連合会 会長)

2015-09-15

「VOCAで夢を叶えよう!」執筆者である圓井様からこのタイトルをいただいた時、鳥肌がたちました。VOCAは圓井さま親子の未来へのスイッチだったのかも知れません。連載2では、成人を過ぎた陽子さんの選挙投票日の様子や現在の仕事について綴られています。

《夢はみるものではなく叶えるもの》この言葉が今、大きく渦まいています。

人生の第二幕

気付けばあっという間に陽子は成人式を迎え、今月10日で23歳になりました。成人式は地域のコミュニティセンターで行われ、苦労して入学を叶えた地元小学校中学校時代の友達とも久しぶりに再会しました。みんな大人になっていました。陽子も勿論その一人です。陽子は私の成人式に作った振り袖を、ツーピースにリメイクして着ていきました。(写真:1)親バカですが、とてもステキで感無量でした。そして、成人式を迎えた彼女も、大人としての義務を果たしながら、これからの人生「第二幕」を開けたのです!

写真:1 成人式の日

成人の義務 選挙にいこう! 

20歳になって間もなく、上手い具合にそのチャンスは訪れました。衆議院議員の選挙があったのです。勿論、行くつもり!でも、どうやって投票する?そう!VOCAくんの登場です!(写真:2)
 

家では、立候補者の放送のテレビを見たり、立候補者の選挙公報チラシを読んだりして、VOCAくんで投票練習です。「彼女も一人の大人として、自ら投票する権利がある限り、またその方法がある限り、自信を持って踏み出さずにどうする!」と思いました。VOCAくんが、私達にその勇気をくれたのです。

投票所には事前に伝えるようなことはせず、いきなり行って投票の仕方を伝えて対応してもらおうと決めました。これまで選挙にいく時は必ず彼女を連れて行って、投票所の方々にもアピールしてきたんだし、インクルーシブな社会では当たり前の事だと思ったのです。
 

そして地域の投票所は、私達の期待を裏切りませんでした!しっかりと彼女は20歳の義務を遂行することができました!方法は・・・4コママンガもご覧下さい♪(4コママンガ:やったぜ初選挙!)

まず、受付で「代筆をお願いします」と伝えると、代筆者と立会人の二人が陽子についてくださいました。私は、「陽子は喋れないのでコミュニケーションの機械で『この人にお願いします』と選びます。」と伝えると、車椅子用の投票台の前で、立会人が候補者名をゆっくりと順番に指差していってくれました。しかし、視覚的にも陽子は不十分ですので、指差しと同時に読み上げてもらうことにし、「この人にお願いします!」とVOCAくんで選ぶことができました。代筆者は陽子が選んだ候補者名を投票用紙に書いて、「これでいいですか?」と見せてくれた時、陽子は嬉しそうにニッコリしました。

同じように、比例代表選挙でも、「この党にお願いします。」という具合にVOCAくんで選び、陽子の初選挙は大成功!その後の選挙も一度も欠かす事はありません。今や、投票所の方々も「待ってました!」という感じです。でも、いつでもすんなり投票できるわけでなく、時間がかかってハラハラする時もありますが、その権利があり、方法がある限り、これからも続けていきたいと思います。何より、本人が前向きである限り!
 

☆挿入の4コママンガは、定期的に発行している「Yokoのおしゃべり広場」に載せている「Yokoの笑顔日和」からの抜粋。陽子の親友ほっちゃんが描いてくれています。

 

写真2: 選挙の日 投票所前

4コママンガ:やったぜ初選挙!

私だからこそできることって何?

大人になったのだから、やっぱり自分なりに社会の役に立つ存在になりたい。地域でできる事ないかな???思いついたのが、陽子が初めて友達をつくり、学校や放課後を共に楽しみ、理解の輪を広げた小学校のある地域での役割でした。

「今の小学校の子ども達が陽子と自然に関わり合えたら、きっと将来、心のあたたかい大人になるはず!」

そして、選んだ場所は「児童館」でした。児童館では、学年を越えて子ども達が学んだり遊んだりしていて、学校よりも自由に自己発進し、お互いに成長しあえる場である気がしました。そこに定期的に陽子が交流に行くことで、学校の勉強とはひと味違った大切な学びを子ども達に提供できたらいいなと。上八万児童館長さんは、「陽子さんが来る事で、今の子ども達に欠けている他人を思いやる気持ちを培って欲しい。」と言ってくれました。

こうして、毎月1回の陽子の児童館交流が始まりました。子ども達はとっても素直に疑問をぶつけてきます。これこそ絶好のチャンスです!
 

「なんで、こんなになったん?」

「どうやって寝てるん?」

「しゃべれるん?」・・・etc.
 

どんな質問にも、きちんと答えます。

「陽子は生まれる時に25分も息が出来なくてね。そのせいで、頭の中に怪我をしてしまったの。それで、手足が動かせなくなったり、言葉も話せなくなったり、ご飯もそのままでは食べられなくなったり、できないことがいっぱい。でもね、車椅子でどこでも行くし、フードカッターしたらなんでも食べられるよ。嬉しかったら笑顔だって!それに・・・ほら、これを使ったら、みんなと挨拶だって、ゲームだってできるよ!」
 

さーて、みんなに大人気のVOCAくんの登場です!一番人気はジャンケンです。(写真4)一番シンプルだけど結構盛り上がります。小さい子でも必ず知っているし、みんなでできるメリットがあります。それから、子ども達自作の双六ゲームでは、サイコロ代わりのオールターンイットスピナーが大活躍です。夏のシャボン玉も、子ども達が大好きな活動。陽子はシャボン玉を発射する電池式玩具をスイッチで操作します。玩具の電池部分にBDアダプターを介してスイッチをつなぎ、子ども達が順番に玩具のスイッチをONにして待ってくれています。陽子の一回のカチッ!でしばらくシャボン玉が発射するように、スイッチと玩具の間にタイマーも接続しておきます。その他の子ども達も、私の自作の輪を使ってシャボン玉を沢山飛ばします。大きなシャボン玉や小さいシャボン玉が、児童館の庭に虹色に光って飛んでいき、みんなの笑顔が弾けます!(写真5)
 

陽子はちょっぴりお姉さん顔でもあります。だって、みんなの先輩なんだもんね♪「何歳なん?」って聞かれることもかつて多かったけど、今では「23歳なんよな!」って言ってくれるようになりました。いつしか、低学年の子の「なんで?」の質問にも、「陽子さんは生まれる時に息ができなくなってな・・・」と、私の代わりに上級生の男の子が説明してくれたときは胸が熱くなりました。

 

写真4:児童館ジャンケン

写真5:シャボン玉

児童館ハートフル事業スタート!

こうして児童館の交流も3年目となり、陽子も同級生の仲間達と同様、「就活」の年となりました!そこで、この活動をもう一歩進めて陽子のお仕事にできないかと思いました。これまでの交流活動の実績と子ども達の様子をまとめ、事業提案書を作成しました。そんな私達の思いを理解し、実践の場をくれた上八万児童館を中心とした徳島市内の児童館長さんたちが徳島市に申し出てくれ、今年の春から、陽子の交流活動は「児童館ハートフル事業」と名付けたお仕事としてスタートする事となりました。今年は上八万だけでなく、他の児童館にも伺います。
 

車椅子の体験をしたり、VOCAくんを使っていろんな遊びをしたり、各児童館の子ども達の人数や様子によって、活動内容は考えます。児童館の子ども達はかつて小学生だった時の陽子の友達同様、興味津々でキラキラしています。そんな素直な子ども達は、私達に新鮮な驚きと達成感をくれます。(写真6)

写真6:車椅子体験

様々な社会の役割を生み出していこう!

重い障がいのある人達も、日々たくさんの支援を受けるだけでなく、その存在は必ず何かの役割を担っていて、誰かの支援をしているはず!と信じてきました。そんな思いを抱きながら、地域で生きていく事にこだわり頑張っていた陽子が中学校1年生の時、私の元に徳島医療福祉専門学校作業療法学科の社会人講師の依頼がありました。私はこの時、重度障がいの陽子が一緒にいてこそ、依頼された授業の目的は達成されると思いました。その私の提案に、学校側も願ったり叶ったりとのことで、彼女と私の講義活動がスタートしました。そうは言っても、初めは私もドキドキ・・・。でも、陽子はVOCAくんでしっかりと学生さんたちに自己紹介をし、やがてグループワーク授業もするようになった時には、学生さんたちが考えた活動の実践モデルとして欠かせない存在となりました。VOCAくん達は、生身の陽子の存在を介して学生さんたちの想像力を広げ、支援機器の存在意義をより強く伝えていったと思います(写真:7、 8 )。
 

そして今、「VOCAで遊ぼう!」を通して、陽子の役割はさらに広がろうとしています。今月は広島の療育センターに伺って、親子で実践レポートをさせていただきます。小さなお友達に会えるのがとても楽しみです!こうして、何にもできないと思われがちな陽子が、実はいろんな事ができたということは、私にとって感動ともいえる発見でした。でも実はそんな可能性は、障害の有無に関わらず誰でもみな様々な分野で持ちあわせていることだったのですね。社会での役割は、1人では見つけられないもの。たくさんの経験と出会い、語らいの中で想像力の視野が広がったとき、輝く光が心にポッ!と灯る時があるんだなと。陽子の場合は、VOCAくんもその課程で大きな役割を担ってくれました。「言葉の代わり?」そんな単純なものじゃない。他者への発進力、社会への適応力を育む機会をたくさん生み出し、陽子が、表情豊かに、感受性豊かに成長するための一助となってくれました。もっと言えば、VOCAくんは、VOCAくんに頼らない多様なコミュニケーション力まで付けくれたのです。

写真7:医療福祉専門学校の授業 1

写真8:医療福祉専門学校の授業 2

夢を叶えよう!・・・大切な人達、大切なVOCAくん達と一緒に

こうして、陽子は自分自身の存在を社会に生かす夢に向かって挑戦を続けています。またそこには、これまでの長い道のりを支えてくれた人達がたくさんいます。そんな、私達の背中を押してくれる人達の存在とVOCAくん達に心から感謝しつつ、これからもみんなが応援したくなる親子でいたいなと思います。そうは言っても、何をするにも親としてのドキドキは今も変わる事はありませんし、生身の人間ですから、今後何が起こるかもわからない・・・。でも、生きている限り今できる事を精一杯、あるがままでチャレンジですよね!この陽子の勇気が、出会うみんなの勇気になっていけばいいな!私達の経験は、もしかしたらみんなの明日のヒントになるかもしれません。そんな願いを込めて、これからも私達のオモシロ人生を発信していけたらと思います。
 

陽子と私は、徳島の障がいのある仲間達ともいろいろな活動をしています。年齢も障がいも違うみんなの活動ですが、楽しめることやできる事をワイワイ言いながら模索しています。そこでも、VOCAくん達が力を発揮し、想像力をくすぐり、楽しさを盛り上げるのに一役かってくれています♪(障がいのある仲間の音楽サークル「ミックスジュース」の活動 写真9:機関車トーマスでツリーチャイム演奏、写真10:電動スライサーでシンバル演奏)そして私達のこの小さな力が、いつか大きな力になって、誰もがいろんな方法で社会の役割を持って生き、新しい価値を生み出し、みんなで共有していく・・・そんな社会にしていきたいな!

我が家には、しばしばステキな陽子の友人達が集まり、楽しい女子会が開かれます。(写真11)彼女達は、陽子が高校受検に挑みながら、「Yokoのおしゃべり広場」という新聞を初めて高校に掲示する交流を始めた時の初代ボランティアです。その「Yokoのおしゃべり広場」も、気付けば40号を数えました。7年の付き合いになった彼女達は心強い支援者である前に、大切な友人です。VOCAくんもまた、支援機器である前に、いつもそばにいて大事な時に自信をくれるお守りみたいな存在です。ヒトとモノは共鳴しながら、心を支え、豊かな毎日を生み出していくのだなと感じます。
 
したい事は何ですか?したい事をみつけませんか?思いきってやってみませんか?あなたの周りの人達と、VOCAくん達と一緒に!!もしも思い通りにできなくても、思い通りになるための一歩かもしれませんから♪♪

機関車トーマスでツリーチャイム演奏(ミックスジュース活動)

電動スライサーでシンバル演奏(ミックスジュース活動)

仲間が集まる会「しゃべラボ」

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