パシフィックニュース
脳血管障害へのカンファレンス2015に参加して
装具
脳血管障害への下肢装具カンファレンス
~秋はみちのくめぐり~
高階 欣晴 (理学療法士・いわてリハビリテーションセンター)
2015-12-01
パシフィックサプライ主催「脳血管障害への下肢装具カンファレンス」~秋はみちのくめぐり~第三弾を岩手医科大学創立60周年記念館で開催いたしました。今回は聴講されたいわてリハビリテーションセンター・理学療法士・高階 欣晴先生からのレポートです。
はじめに
平成27年10月24日に盛岡市で行われた「脳血管障害への下肢装具カンファレンス2015」に参加させて頂きました。
福島・仙台に引き続き3回目の東北での開催でしたが、東北地方のみならず多方面から参加されており、装具に対する関心の高さを表しているように感じました。個人的にも臨床現場で装具を用いる機会が多い中で作成時期、対象者への説明、種類の検討、カットダウンの時期、再作成など非常に悩む機会が多く本研修会への参加を希望しました。
基調講演
カンファレンスは大きく分けて基調講演、演題発表、フリーディスカッションの三部構成となっており、基調講演として広南病院の阿部浩明先生と京都大学の大畑光司先生に装具療法の有用性と効果的な活用についてご講演頂きました。お二方とも臨床現場の知見を客観的な方法で検証されており、非常に説得力のある興味深い内容でした。
特に印象に残ったこととして、
1・ゲートソリューションタイプの長下肢装具を用いた前型歩行は揃え型に比べて
優位に筋活動が多い。
2・CPGを利用した脳幹~脊髄レベルでの自動的な歩行機構を適宜活用する
3・装具を用いることで運動入力パターンを適正化する一助となる
4・長下肢装具作成群と非作成群では作成群の方がFIMが早期から向上する
5・長下肢装具使用者の歩行自立に関連する因子として非麻痺側筋力(廃用の
程度)と麻痺側荷重量の割合が挙げられる
上記にもあるように急性期から下肢に対するトレーニングは歩行能力のみならずバーセルインデックスの得点といったADL能力にも影響すると言われており、装具療法を効果的に活用することが対象者の移動能力のみならず生活の予後にも大きく関与することを考えると、装具を主体的にコーディネートする理学療法士の責務を再認識する機会となりました。
阿部浩明先生
大畑光司先生
演題発表
演題発表では装具に関する症例検討、啓発活動、アフターフォローの紹介など理学療法士及び義肢装具士から8演題が発表されました。症例発表では事例ごとの問題点とその解決方法を経時的に紹介して頂き、自分も含めた多くの参加者が同じような悩みを共有することができたと思います。
地域連携に向けて
装具の啓発活動に対する報告は「山形地区脳卒中下肢装具療法研究会」の発足から現在までの活動報告でした。個人的に非常に興味深い内容で、それぞれの地域でも参考になる取り組みであると感じましたので、一部抜粋致します。
本会は脳卒中に対する下肢装具療法について地域のセラピストと共に学び、考え、顔の見える繋がりを作ることを目的に立ち上げられたそうです。発足の背景として連携する施設によって装具に対しての見解が異なったり、処方した装具が転院先、退院先で活用されなかったという問題がみられたり、活用されたか否かも分からなかったりと、地域における装具療法のあり方に関しての連携不足を感じたことがきっかけとなったそうです。
2013年6月発足後、具体的な活動として講師を招いてのセミナー、症例検討会、ソーシャルドリンク(食事や飲み物を囲みオープンに話合う場の提供)などを行っており、最終的には「山形式」の装具地域連携を作成するところまでいきたいとおっしゃっていました。山形県同様に東北地方は広域な土地柄であるため地域による医療・リハ資源の差がある状態なので、それぞれの地域のセラピスト及び義肢装具士が相互理解を深めながら主体的に地域に発信していくことが必要だと強く感じました。
このような地域連携は装具の分野のみならず、リハビリテーション全体として急性期・回復期・生活期と切れ目のないリハビリテーションの提供や地域包括ケアシステムの推進が厚労省の指針として示されており、セラピスト一人一人が誰のための連携であるかを今一度考えながら、対象者に向き合っていく必要性を感じました。
最後になりますが、このような貴重な研修会を東北で開催し続けているパシフィックサプライ様に心から感謝致します。
【執筆者プロフィール】
高階欣晴氏 (理学療法士)
1982年 秋田県生まれ
2000年 岩手大学工学部福祉工学科入学
2004年 仙台医療センター付属リハビリテーション学院入学
2007年 いわてリハビリテーションセンター入職
※現在は訪問リハビリ担当
フリーディスカッション
「脳卒中片麻痺の歩行とバイオメカニクス」セミナー開催
12月12日(土)10:00-16:00 大阪府大東本社 にて国際医療福祉大学の山本澄子先生によるセミナー「脳卒中片麻痺の歩行と装具のバイオメカニクス」を開催する事となりました。
片麻痺者の歩行分析の第一人者である山本教授に分かりやすくご教授いただきます。ぜひご参加ください。
山本教授には、パシフィックサプライ(株)東京本社ホールにて講義していただき、その講義を 札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・福岡 に設置したサテライト会場にて同時中継いたします。
《山本澄子教授からの、本セミナーに関するメッセージ》
健常者の歩行の特徴として立脚期のロッカー機能があり、これによって効率的な歩行ができるといわれています。特に立脚期の最初に起こる踵ロッカーはなめらかな歩行を行うために重要な機能です。片麻痺者では歩行中のロッカー機能が失われ、立脚初期の踵接地が困難な場合、踵ロッカーが使えず重心を前に進めることが困難になります。踵ロッカーを補助する短下肢装具を使用することによって、歩行を改善することができます。しかし、装具の使用はそれだけでは十分でなく運動療法との組み合わせで効果を発揮します。今回はバイオメカニクスの観点から3次元動作分析装置で計測した動画を用いて、健常者の歩行、片麻痺者の歩行と短下肢装具の使用による歩行の変化について説明します。
お申し込みは下記サイトへ
https://www.p-supply.co.jp/seminars/202
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