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パシフィックニュース

人間工学に基づいた安全な患者/利用者介助 連載6

リフト・移乗用具

人間工学に基づいた安全な患者/利用者介助 連載6

連載 人間工学に基づいた安全な患者/利用者介助

~SPHMカンファレンスから~

森ノ宮医療大学 上田喜敏 博士(工学)

2016-02-01

海外のSPHMカンファレンスはどのように開催されているのでしょうか。
今号連載6では、執筆者上田先生が参加されたアメリカSPHMカンファレンスを紹介しています。

『快適ですか Comfortable?』のニュアンスが大きく問われています。

SPHM Conference

2011年(平成23年)から、アメリカの「安全な患者介助と移動のカンファレンス(Safe Patient Handling & Mobility Conference : SPHM Conference)」に参加しました。

このカンファレンスは、2000年から実施されており、フロリダを中心に開催されています(今年はアリゾナ州です)。

このカンファレンスでは、基調講演と演題発表やポスター発表と展示会、ワークショップがあります。

基調講演では、米国・国立労働安全衛生研究所(NIOSH=ナイオッシュ)の研究員の講演などがあります。最新のケアに関する研究などが報告されます。

Marras氏は、Biomechanical Evidence(バイオメカニクスのエビデンス)で No Safe Way to Manually Lift Patients (「患者の徒手的持ち上げに安全な方法はない」)と題して、徒手的持ち上げで椎間板に7,500N以上の圧縮力がかかると報告したりしています。

SPHM2011

SPHM2012ポスター発表

ワークショップ

またワークショップでは、各部門に分かれて実技を交えながらします。PT/OTの為のSPHという演習では、歩行用のリフトと吊り具によるデモンストレーションや電動昇降機能付き歩行器とスライディングシートを利用した片麻痺歩行練習などがありました。

演習バランスボールEX

演習歩行器EX

演習片麻痺歩行器EX

カンファレンス展示会

カンファレンスの展示会には、全米だけでなくヨーロッパ系の企業の展示もされていました。そこでは福祉用具の体験ができます。

この中で業者の方々が、必ず体験している人に聞く言葉があります。「Comfortable」という言葉です。

これは辞書では、「気持ちのよい、安楽な、満足した」という言葉です。日本の展示会で体験してもあまり言われない言葉ですが、体験した人々に業者の方は、必ず聞きます。

 

「快適ですか(Comfortable)?」

 

手で行う介助より、機械で行う介助の方が快適であり、福祉用具メーカーにとって重要なニュアンスであると思います。

展示会2012

展示会2011 著者とEtac社移乗機器技術教育マネージャーThy氏

快適な介助 セーフティケア

安全な患者/利用者介助では、ISOTR12296「人間工学ヘルスケア部門の徒手的介助」の中で目的として以下のことが書かれています。
 

介護提供者にとって安全な職場環境を提供する労働環境改善

患者の安全、尊厳、プライバシー、及びケアの質を確保する

 

 介助者の快適性と安全、患者の快適性と安全(尊厳を含む)にすることになります。安全な患者/利用者介助は、両者にとって安全で快適な介助(セーフティケア)をすることになります。

宿泊先ホテルのプールに入るためのリフト

著者紹介

上田喜敏(うえだひさとし) 
理学療法士。1991から箕面市(障害者福祉センター、障害福祉課、総合保健福祉センター、市立病院、訪問リハビリテーション事業所)にて勤務し、病院リハ、子どものリハや福祉用具、住宅改修、介護保険などを担当した。2007から現職。博士(工学)。患者介助人間工学国際委員会メンバー(International Panel of Patient Handling Ergonomics(IPPHE))

研究領域
人間工学、福祉用具研究、安全な患者介助(Safe Patient Handling = SPH)
研究実績・報告・著書
◎最適なベッド高さにおける介助作業効率についての生理学的研究
(フランスベッドメディカルホームケア研究助成財団 2008)
◎介助作業実態分析から考えられるベッドでの安全な患者/利用者介助に関する人間工学的手法の研究
(徳島大学大学院 2012)
◎リフトリーダー養成研修テキスト
(共著:テクノエイド協会 2009)
◎腰を痛めない介護・看護
(共著:テクノエイド協会 2011)
◎介助作業中の腰痛調査とベッド介助負担評価
(福祉のまちづくり研究 2012)
ArjoHuntleigh Guidebook for Architects and Plannersの評論者メンバー上田喜敏(うえだひさとし)

 

上田喜敏先生

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