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人間工学に基づいた安全な患者/利用者介助 連載9

リフト・移乗用具

人間工学に基づいた安全な患者/利用者介助 連載9

人間工学に基づいた安全な患者/利用者介助 連載9

富山県の腰痛対策から

森ノ宮医療大学教授 上田喜敏(博士工学)

2016-07-01

森ノ宮医療大学教授 上田喜敏先生の連載も今回が最終回となりました。毎回講義を受けているような新鮮な学びをいただきました。心から御礼を申し上げます。日本の介護現場から腰痛をなくしたい!この願いを胸に利用者も介助者も安全で快適なセーフティケアが拡がることを祈ります。

富山県の腰痛対策

2011年から富山県介護実習普及センターでは、介護の腰痛対策に取り組んでいます。この研修の一番最初に仕掛けをしたのが小生です。勿論それを発展させているのは富山県介護実習普及センターです。私がこの研修で関わっているのが腰痛予防推進研修・フォローアップ研修・事例報告会などです。

2011年腰痛対策推進研修会

富山県腰痛予防の取り組み

2年目以降は現在の形式ですが、1年目は「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」を参加者の施設でとって1ヶ月後に集計を基に対策について各施設に伝えるという形でした。

結果、回答施設形態と人数は、介護老人福祉施設(以下特養)25施設772名、介護老人保健施設(以下老健)18施設501人、通所介護と通所リハビリテーション、短期入所介護(以下デイ)34施設445人、訪問介護事業所(以下訪問)7施設62人、介護療養型病床(以下療養)6施設152人、グループホーム4施設41人であった。94施設・1973人からの回答になりました。そのうち腰痛有りと回答した人が、59.7%という結果になりました。

この結果から富山県介護実習普及センターが「腰痛予防の取り組み」を実施することになりました。センターのホームページでは、「介護労働者の腰痛による労働災害は年々増加傾向にあります。この腰痛が介護労働者の離職の要因になり、社会福祉施設で働く介護職員の人材不足は深刻な問題になっています。このような社会的背景から、富山県介護実習・普及センターでは、福祉用具を積極的に活用し、利用者自身の運動機能をできるだけ活かすことで、介護者の身体に負担のかからない介助方法を習得するための下記の研修を開催しています。」となっています。(図1)



図1 富山県研修体制

腰痛予防対策モデル福祉施設

さらに腰痛予防対策モデル福祉施設を指定する取り組みがなされています。ホームページでは「介護職員の腰痛予防対策に積極的に取り組んでいる施設を「腰痛予防対策モデル福祉施設(以下、モデル施設)」とし、他施設から研修生を受け入れ、腰痛予防対策の普及・促進を図ります」となっています。


図2 モデル施設

平成25年度は「特別養護老人ホームきらら」と「特別養護老人ホームささづ苑」、平成26年度は「特別養護老人ホームソレイユ」と「特別養護老人ホーム福寿園」、平成27年度は「特別養護老人ホーム越野荘」と「特別養護老人ホームほのぼの苑」がモデル施設に指定しされました。

福祉用具導入過程

表-1、2は、ある施設(特別養護老人法務ささづ苑)の福祉用具導入前と平成27年7月時点の福祉用具の導入過程を表しています。

                                                                                                                表1 平成23年4月


                                                                                                                 表2 平成27年7月

 設備投資を積極的に行い福祉用具を購入しています。これにより従業員の安全性や作業効率を改善するために実施しています。その結果1年目の離職者が2年連続0となっています。


研修会で出会った人たちが様々な福祉用具を使い、姿勢に気をつけながら働いている姿を見ると小生自身が嬉しくてたまらなくなってしまいます。

表3は、強化週間の自己チェックシートで、2.には「ベッドの高さを上げる」や4.では「膝つく」と書いてあります。工場などで実施している業務改善方法です。 


                                                                     表3腰痛予防強化週間自己チェックシート(ささづ苑から)

新刊 セーフティケアの介護・看護

上田先生編著による新刊 「セーフティケアの介護・看護/ 腰痛を起こさない介助技術と福祉用具」 が発行されました。
写真と図解でわかるシーン別介助方法が満載です。 この本を参考に、介助技術の改善がなされ、日本の介護現場から腰痛で苦しみことのない日がくることを願っております。

http://www.hhcs.co.jp/orderform/orderform_SY.pdf

新刊 セーフティケアの介護・看護

著者紹介

上田喜敏(うえだひさとし) 
理学療法士。1991から箕面市(障害者福祉センター、障害福祉課、総合保健福祉センター、市立病院、訪問リハビリテーション事業所)にて勤務し、病院リハ、子どものリハや福祉用具、住宅改修、介護保険などを担当した。2007から現職。博士(工学)。患者介助人間工学国際委員会メンバー(International Panel of Patient Handling Ergonomics(IPPHE))

研究領域
人間工学、福祉用具研究、安全な患者介助(Safe Patient Handling = SPH)
研究実績・報告・著書
◎最適なベッド高さにおける介助作業効率についての生理学的研究
(フランスベッドメディカルホームケア研究助成財団 2008)
◎介助作業実態分析から考えられるベッドでの安全な患者/利用者介助に関する人間工学的手法の研究
(徳島大学大学院 2012)
◎リフトリーダー養成研修テキスト
(共著:テクノエイド協会 2009)
◎腰を痛めない介護・看護
(共著:テクノエイド協会 2011)
◎介助作業中の腰痛調査とベッド介助負担評価
(福祉のまちづくり研究 2012)
ArjoHuntleigh Guidebook for Architects and Plannersの評論者メンバー上田喜敏(うえだひさとし)

 

上田喜敏氏

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