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パシフィックニュース

変形性膝関節症被験者における膝装具の対照比較試験

装具

変形性膝関節症被験者における膝装具の対照比較試験

2010-07-01

概要

バウアーファインド社ゲニュTrainを使用し、変形性膝関節症被験者170名(ゲニュTrain使用:83名、対照グループ:87名)を対象にランダム化比較試験を6週間実施した。
全被験者は従来の保存的治療を受け、治療群の被験者はゲニュTrainを装着した。

日中の痛みを被験者自身で評価を行った結果、休息時、夜間、活動時いずれも対照群と比較して、観察期間中、ゲニュTrain装着者の方が著しく大幅な改善をもたらすことが実証された。

全体的な臨床評価のスコアはゲニュTrain®群が著しく上回った(p<0.002)。比較対照グループでは84被験者中30名(36%)の改善であったが、ゲニュTrain®グループでは82被験者中62名(76%)に改善が見られた。

ゲニュTrain被験者の74名中63名(85%)は装着に対して良好な評価をしたが、2被験者のみ臨床中にゲニュTrainの装着を中断した。
ゲニュTrainは変形性膝関節症被験者の評価が高く、症状緩和の促進に使用されている。変形性膝関節症被験者の保存的治療にゲニュTrainの使用を考慮するべきである。

はじめに

変形性関節症は非常に一般的で、特に股関節、膝関節は機能不全に非常になりやすい。疾患による経済的な影響は広範囲に及ぶ。
鎮痛・抗炎症剤を用いての保存的治療は症状改善には十分とされるが、基礎疾患の経過には治療効果がない。疾患の最終的治療としては、主に股関節または膝関節の人工関節置換を含む外科的手術となる。
ゲニュTrain(バウアーファインド社)は高性能な伸縮性膝装具である。
特殊な形状のシリコン性ゴム製インサートが備わっており、膝蓋骨を囲み、安定させている。(図1)
我々は変形性膝関節症の保存的治療を実施してきた被験者に、膝装具の高品質及びゲニュTrainの特性が一層の症状緩和につながるか、治験を実施した。
この確認が出来れば、ゲニュTrainは該当被験者に保存的治療の新たな有効な要素となり、症状緩和の促進、現在必要とされている医療相談・福祉支援の数の潜在的な減少に繋がる。

被験者と方法

被験者
装具の改良治療に関する治験参加のリウマチ専門施設に通院する外来被験者を試験対象とした。被験者は年齢18歳以上、変形性膝関節症被験者を対象とした。膝関節もしくは半月板に大きな損傷経験がある・膝関節手術を受けた被験者、リウマチ性関節炎・その他炎症性関節症がある被験者、股関節もしくは足関節部に関節炎が重篤に併発している被験者は対象外とした。脚サイズおよび形状がゲニュTrain®の標準サイズに適合しない被験者もまた対象外とした。

■方法
治験検査および放射線検査(必要に応じて)を行い、変形性膝関節症の診断を確認した。
該当被験者は参加/排除基準を満たし、参加するにあたりインフォームドコンセントを行った。その後、測定を行い、各被験者に適合するゲニュTrainの標準サイズを決定した。被験者の体格と脚部の測定で、どのゲニュTrain®の標準サイズにも適合しない被験者が現れた場合、その被験者は治験番号を割り当てる前に治験対象外とした。該当被験者が対照群に無作為に選択された場合も同様とする。

治験に参加している被験者は、無作為化コードに従って、治験番号が割り当てられ、治療群が決定される。
該当被験者は無作為に治療群となり、適切なサイズのゲニュTrain®膝装具を装着して治療が開始する。
常時装着するよう指示をしたが、夜間時の使用は任意である。

対照群を含むすべての被験者は、鎮痛・抗炎症剤、物理療法(熱療法を含む)などの“標準的治療”を必要に応じて受けた。
治験の最低6週間前に一定の投与を標準的治療で受けた場合、治験期間にわたって変化がない状態が続く場合にのみ、非ステロイド性抗炎症薬・コルチコイドを服用しても良いとした。
下記に記載のとおり、試験開始時とその6週間後の追跡調査時に評価を行った。2回目の訪問時、被験者を治験し、全体的な変化を評価した。
そのときはゲニュTrainの容認性・快適性に関して治療群の該当被験者に質問を行った。


■評価
第一回目の治療効果の評価は被験者自身の評価に基づいている。該当自己評価は10cmの水平視覚的アナログスケール(VAS)を利用した。
該当スケールの片方には“None”、もう片方に“Worst Imaginable”と記載がある。
該当スケールは日中の休息時、活動時、夜間時の3つの状況それぞれの痛みに使用する。
治験の最後に、被験者は6段階(0 = すごく悪くなった, 1 = 少し悪くなった, 2 = 変化なし, 3 =少し良くなった, 4 = すごく良くなった, 5 = 治癒した)で改善状況を評価する。


■統計手法
対応のあるt検定を用いて、被験者内から群内への変更に関する優位性を評価する。
二標本コルモゴロフ・スミルノフ検定・対応のないt検定を用いて2つの群を比較する。対応のないt検定は治療中の群内変更に適応する。常時、両側優位性試験を利用した結果、優位性の閾値はp=0.05となった。

結果

■被験者
合計170被験者(ゲニュTrain:83、対照グループ:87)が治験に参加した。33被験者が男性、137被験者が女性だった。
平均年齢は63.2歳(年齢幅:32-87歳)、平均体重は65.9kg(体重幅:40-123kg)、平均身長は159.4cm(身長幅:140-182cm)であった。症候性疾患の寛解期間は48時間(期間幅:1ヶ月-45年)であった。
年齢、体重、身長、寛解期間は2つの治療群で共通である。

170被験者のうち、4被験者(ゲニュTrain:1、対照グループ:3)は追跡調査に参加しなかった。
その結果、有効性は166被験者(ゲニュTrain:82、対照グループ:84)に基づいた結果となる。


■疼痛評価
VAS評定平均値をまとめた。治験時の変化は図2-4に示した。3つの疼痛評価(日中の休息時、活動時、夜間時)の結果はすべて類似しており、6週間の観察期間中、対照群と比較してゲニュTrainグループでより大きな改善が見られた。

ゲニュTrain群は日中の休息時の痛み(p<0.05、図2)・活動中の痛み(p<0.001、図3)で統計的に優位であった。
夜間の痛みに関しては優位差が見られた(p=0.060、図4)。


■全体的評価
全体的評価(図5)は、ゲニュTrain®群(p<0.05、コルモゴロフ・スミルノフ検定)に優位性を示している。
ゲニュTrainで治験を行った被験者の大半(82名中62名、76%)に改善が見られた(スコア4 or 5)。
一方、対照群では84名中30名(36%)に改善が見られた。


■ゲニュTrainに関するコメント
被験者74名中63名(85%)がゲニュTrain®に対して良好な評価を得た。
2名の被験者(2%)が心地良くないという理由からゲニュTrain®の装着を停止した。
9被験者(12%)が少し不満があると報告をしたが、継続して使用している。



図2)視覚的アナログスケールスコアであらわす休息時の痛み改善。
スコアの低下は絶対的低下である(単位:%)。
ライン直上部にあるP値は治験中の優位性の変化を示している。
ライン間のP値は2群間の改善における優位差を示している。

図3)視覚的アナログスケールスコアであらわす活動時の痛み改善。
スコアの低下は絶対的低下である(単位:%)。
ライン直上部にあるP値は治験中の優位性の変化を示している。
ライン間のP値は2群間の改善における優位差を示している。

図4)視覚的アナログスケールスコアであらわす夜間の痛み改善。
スコアの低下は絶対的低下である(単位:%)。
ライン直上部にあるP値は治験中の優位性の変化を示している。
ライン間のP値は2群間の改善における優位差を示している。

図5)全体的評価(1 =かなり悪くなった; 3 = 変化なし; 5 = かなり良くなった)。
グループ間の優位差(p<0.002、二標本コルモゴロフ・スミルノフ検定)

図2,3

図4

図5

考察

ゲニュTrainなどの製品を臨床評価するには、2つの避けられない問題がある。
まず1つ目は、理論上は望ましいが、厳密に“ブラインド”方式を用いて治験を行うことは明らかに不可能である。
第2に“プラセボ効果”の問題がある。特に自己限定性の障害における研究では、今回の治験において、特定の評価指数にて対照群での著しい改善があった。

これは治験の統計的検出力を低減する効果があり、治療群と対照群を識別する。
ブラインド方式が用いられないために起きうるバイアスを最小限にするために、大規模な治験を行っている。
症状(疼痛)が疾患の過程の主な特徴であるため、被験者が行う自己評価に最大の重点をおいている。
被験者は2つの治療を比較するわけではなく、それぞれの治療に関して症状の違いを報告するだけである。被験者の自己評価では、試験担当者が関与した評価よりも統計的偏りがほとんど発生しなかった。理由は、試験担当者は両方の治療グループの被験者を必然的に評価していたからである。大多数の被験者が関与した治験デザインにより、適切な統計的検出力が推定された。

この種の治験では不可避な問題にもかかわらず、治験の結果は治療グループで一貫した差異を示した。
ゲニュTrainは観察期間中に大幅な改善が見られ、評価基準の大部分で著しい改善があった。ゲニュTrainの全体的評価は著しく良好な結果となった。

ゲニュTrainを装着した被験者から高い割合で、ゲニュTrainに良好な評価を得た。そのうち2症例(2%)のみ心地がよくないという理由からゲニュTrainの使用を中断した。
本治験では、膝装具を装着している被験者において、ゲニュTrainは耐性がよく、使用することで症状の著しい改善につながったことが実証された。
ゲニュTrainにより該当被験者は更に症状面での改善を提供し、更に費用面でも医療・福祉支援の必要性を減少させることにつながる。

ほとんどの場合において、ゲニュTrainのコストは医療・パラメディカル各診断費用より非常に低額である。ゲニュTrainの使用は、膝装具を装着している被験者の保存的治療の治療用具にさらなる価値を高める可能性があると考える。

参照文献

Controlled trial of a knee support (Genutrain') in patients with osteoarthritis of the knee

筆者
BERRY H. ; BLACK C. ; FERNANDES L. ; BERNSTEIN R. M. ; WHITTINGTON J. ;