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パラリンピック(パラカヌー)を支える技術(2)

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パラリンピック(パラカヌー)を支える技術(2)

2016年リオパラリンピック(パラカヌー) 未来を創るサポート

取材協力 宮本雄二(川村義肢?本社製造部) 山口慎司(関東本部製造課)

2016-10-03

2016年リオパラリンピックからパラカヌーが正式種目になり、瀬立モニカ選手(東京江東区)が決勝進出!8位へと健闘しました。弊社postgresグループ川村義肢?は昨年より瀬立選手の競技用カヌーシートの製作をサポートしています。前号に続き、リオパラリンピックに技術サポートとしてモニカ選手に帯同した本社製造部技術者宮本雄二のインタビューをお届けします。

パラリンピックメカニックサポートとしてリオに臨む

Q: リオパラリンピックお疲れ様でした。パラカヌーのメカニックサポートとして瀬立モニカ選手に帯同されましたがリオはいかがでしたか。

【宮本】 今までパラカヌー国際試合に帯同する機会は何度かありました。ドイツ、ロシア、イタリアなどですが必ず何らかの突発事故が起きていたのです。例えば船が壊れたり、現地でシートの材料を調達して、シートを現場で製作したりもしました。ところが今回のリオパラリンピックでは、自分がシートをさわることがないくらい、事前準備がきっちりと出来ていました。パラリンピックに出場が決定してから、関東製造スタッフ(河原・山口)と一緒に事前合宿にも参加しましたし、何回もミーティングを重ねました。パラリンピックで起きうるであろう課題や、現地に着いてから、モニカ選手から「こうして欲しい!」が出なくても済むように、事前に問題をクリアしておきたかったんです。
 

私たちは、村外支援スタッフなので選手村に入れません。選手村には、選手1名に対して帯同者は1名だけなのです。オリンピックのパスやIDもないので現地入りしてからは、練習の付きそいやコースにも入ることが許されません。


それがオリンピックなのです。


そのような状況が分っていたので、メカニックとしての事前準備は万全に固めて臨みました。

川村義肢社員からの応援日の丸!モニカ選手&宮本

精神面へのサポート

Q: 現地入りしてからはどのようなサポートをしていたのですか。
 

【宮本】 私たちは、選手村の近くにホテルをとっていました。試合までモニカ選手の漕ぐ練習や状態が見れないことのジレンマもありましたが、彼女は、毎日練習後に私たち村外支援スタッフ(専任トレーナーも含む)が滞在しているホテルに来て、ミーティングを重ねていきました。

今回のリオパラリンピックカヌー会場は海水なので高波もあります。彼女は1番障害の重いクラスです。波の高い日はバランスをとるのが難しいとか、漕ぐことが出来なかったこともあり、練習が十分に出来ない日もありました。

   

今回の私の役目は、モニカ選手が試合に集中できるように精神面でのサポートをすることでした。現地に行けば手配ミスやいろんなアクシデントも想定されます。気持ちが揺らぐこともありますし、気持ちが萎えた時は「何しに来たんだ!」と喝を入れることもあり、彼女の戦う気持ちが萎えないように努めました。

 

今回出場した国は10カ国です。今までの国際試合ならレース会場へも入れて試合に臨む選手に直に「行ってらっしゃい!」とエールを送ることも出来たし、試合直後の悔しさや嬉しさの感情をそのまま受け止めることも出来ました。しかし、今回は、自分は観客席からの声援しか出来ません。これが国際大会とオリンピックの違いですね。パラカヌーの競技は、選手村に入れるのは1選手につき、1名のスタッフしか認められていません。団体戦の場合は2名ですが。船も運ばないといけないし、パドルもあるし、1名では人員が足りないんです。何とかこの体制を変えて欲しいです。


結果は決勝進出して8位。決勝進出の嬉しさと悔しさも半々ですが、パラリンピック出場の経験は大きな成果です。東京パラリンピックに向けていい経験になったと思います。
 

 

瀬立モニカ選手

技術向上へ向けて

Q: 今後、技術者としてパラスポーツのサポートをどのように考えていますか。
 

【宮本】 パラリンピックも終了し、彼女は、また本来の学生生活に戻ります。


今後は身体強化に向けて、室内トレーニングも始まるでしょうし、身体が変化すれば、それに合うシートも必要になります。落ち着いた生活に戻りモニカ選手から依頼があれば、また一緒にサポートしたいです。でも一度、彼女には他社でシートを作ってもらう経験もいいかな?とも思います。他社との技術の違いを知って欲しいです。もしこちらが驚くようなシートが出来たとしたら、負けじとそれを上廻るもの凄いシートを私達で作ってやりたいです(笑)。


私たちは、冬季パラリンピックチェアスキーのシート製作(冬季パラリンピック金メダリスト狩野選手・森井選手等)もしていますが、カヌー選手へのメカニックサポートは中嶋明子選手が始まりでした。当初、中嶋選手の国際大会には別の同僚が技術サポートで帯同していました。その技術サポートを私が引き継ぐようになり、その後同じ大会に出場したモニカ選手からシートの相談を受けたのがメカニック支援のきっかけとなりました。

東京パラリンピックへ向けて

Q: これから技術者としてどのようなサポートをしていきたいですか。
 

【宮本】 東京パラリンピックは4年後です。私の予想ですが“なんちゃってアスリート”が増えるような気がします。種目を変えてチャレンジする人も出てくるでしょう。私たちは製作会社ですからお客さまのご希望を叶え得るためなら何でも創ります。
 

レジャーとして楽しみたい人にはレジャー用を製作します。
カヌーを漕ぎたいというなら漕げるように製作します。
 

モニカ選手は「表彰台に立ちたい」という強い気持ちがあったから、私たちも一緒に動き、一緒に戦うことが出来ました。選手の付加価値プラスアルファは本人のやる気次第です。

 



瀬立モニカ選手は、中学校でカヌーを始め、高校生の時に不慮の事故により車椅子生活となり、リハビリを経てパラカヌーに転向しました。しっかりと体幹を支えるシート製作の相談をpostgresグループ川村義肢㈱にいただきました。2015年5月、本格的な競技用のカヌーシートの製作がスタートしました。

 

オリンピック閉会式スクリーン映像『 LOVE SP0RT 』

リオパラリンピック閉会式 新幹線とカヌーで並漕するシーン

2016リオパラリンピック閉会式