パシフィックニュース
連載2 腰痛予防プログラム
リフト・移乗用具
パシフィックサプライ株式会社 事業開発本部 中村 内彦
2018-04-02
特別養護老人ホーム・桃寿園様で行った「腰痛予防プログラム」の報告の後編です。
特別養護老人ホーム・桃寿園様での実施報告
腰痛予防プログラムでは、基本的に3回の訪問でアプローチを行う計画になっており、今回は2回目と
3回目の訪問、そしてプログラム終了後に実施をしたアフターフォロー訪問に関して報告いたします。
参考として、訪問自体は2週間ごとに行い、アフターフォローはプログラム終了から60日経過後に行っております。
確認からさせて頂きますと、1回目の訪問では2つの問題点に着目し、それぞれで改善案を提示させて頂きました。
【問題点①】
ベッドから車いすへ移乗する際、スリングシートをベッドに戻るまで装着したまま(敷きっぱなしの状態)にされるケースがある。
その際に、装着したままにするには不適切なスリングシートを利用されている。
この背景として、
・車いす上でスリングの着脱が難しい利用者が複数名おられること
・食事などの関係で、全員が同時移乗する必要があること
が挙げられます。
そのため、スリングシートが同時に複数枚必要になり、数を合わせるために導入してある
様々なスリングを深く考えず使用していました。
残念ながら、一般的にスリングはあくまで移乗の時のみに使用することを想定しているため、
装着したままでは身体に負担が発生してしまうのが現実です。
ただ、装着したままで問題のないスリングなどもありますので、今回は弊社から敷きっぱなしにしやすい
『ベーシックシート型スリング』を、プログラム期間中貸出することにしました。
今回は状況を鑑みて提案をしませんでしたが、もし介助のルーチンを変化させることで
対応できるのであれば、それはそれで構わないと思います。
例えば、利用者ごとに食事時間をずらすことが出来るのであれば、一度に必要となるスリングシートの枚数が減らせると思います。
【問題点②】
リフトやスリングが複数メーカーの製品が導入されているため、特徴による使い分けが出来ていないこれは、問題点①にもかかわる話です。
リフトやスリングは、機種や形状により少しずつ特徴が違います。
意識をせずとも、ある程度までは活用できるかもしれませんが、特徴を理解したうえで利用
頂くことで格段にケアの質と負担が変わります。
1例として、リフトのハンガーの件です。
桃寿園様で利用されているリフトに、弊社床走行型リフト smart とパラマウント様の「KQシリーズ」があります。
smart は国内では珍しい4点ハンガー、「KQシリーズ」は国内で一般的な2点ハンガーとなっております。
取付のハンガーが4点なのか2点なのかで、使いやすいスリングが異なりますし、吊上げた時の感覚は格段に変わります。
他にも、スリングの形状が「ハーフ」と「フル」で対応できる利用者が異なることを意識されておりませんでした。
そのため、本来であれば、「フル」が望ましい利用者に「ハーフ」を利用されていたケースもあります。
結果的に、利用者に多少なりとも負担がかかる上、吊上げにも余分な手間がかかってしまっていました。
これらの問題点を整理し、気をつけて頂くようにお伝えをしたのが前回までです。
2回目の訪問
2回目の訪問では、まず「お伝えしたことが守られているか」の確認から行いました。
幸い、多くのケースで守られており、格段に移乗のスムーズさが向上しておりました。
そのため、移乗の立合いでは、より細かな指導を行うことにしました。
また、桃寿園様の希望で入浴時のリフトの使用法を相談頂きましたので、一緒にどんな流れでリフトを
使用するのが良いのか検討させて頂いております。
そして何よりも「リフトによる移乗は途中でやり直してよい」と提案をさせて頂きました。
介護施設では、入浴場面に限らずどうしても時間の制約があり、なるべくやり直したくないと考えてしまいがちです。
それ自体は仕方がないことだと思います。
しかし、時間を気にして無理な姿勢や状況で移乗を行ってしまうと、結果的にスタッフ・利用者両方の
負担になることが多く、移乗後に姿勢を修正しようとしても、結局は時間がかかったりします。
もちろん最悪のケースは、身体を痛めたり落下をしてしまうという結果になりかねません。
そのため、リフトを利用しているときは「簡単にやり直せる」ということを伝えさせて頂いております。
3回目の訪問とアフターフォロー
その後、3回目の訪問は2回目と同様にリフト操作の定着確認を中心に行いました。
ただ、もう少しだけ踏み込み、そもそもリフトを利用する場面や利用者を広げる提案をさせて頂きました。
例えば、一時期骨折をされていた利用者に対して、リフトを使用するかしないかがスタッフ間で意見が
分かれておりましたので、実際の移乗場面に立合にてリフトを使用するほうが利用者自身の負担軽減に
なると伝えさせて頂きました。
詳細は省きますが、明らかにリフトを使用しない移乗の方がご本人に負担をかけていたためです。
もし、まだ迷われるのであれば、医師に確認を取るように伝えさせて頂いております。
いずれにしても、3回目の訪問は2回目と比較しリフトの習熟度が増し、積極的にリフトを使う場面が
増えたことが感じられる訪問となり、確かな手ごたえを感じて「腰痛予防プログラム」を終了することが出来ました。
参考までに、リフトを使用する場面が増えたというのは、実際の数値でも確認が出来ています。
実は「smart」を含めmolift製のリフトは、本体内に稼働状況を計測するコンピュータが内蔵されています。
そこから、実際にリフトを試用した件数を測定すると、一日あたりの利用数が「プログラム」前に比較し
30%程度向上しておりました。
グラフには、後日再訪問をした際の数字も載っております。
そちらを見て頂ければ、リフトを積極的に使用しておられるのが「プログラム」期間中だけではなく、
施設全体として定着しているのがお分かりいただけるかと思います。
最後に~お気軽にお問い合わせを~
今回の 腰痛予防プログラム は、施設でリフトを追加導入後1年が経過したタイミングでの
実施でしたが、明らかにトレーニングの効果が現れています。
これは、本プログラムのエビデンスの一つとして参考にして頂ける結果だと思います。
弊社では、これからも本プログラムを活用したトレーニングを実施していきますので、もし
興味がある方がおられましたら是非お気軽にお問い合わせを頂ければと思います。
【腰痛予防プログラム 問い合わせ】
パシフィックサプライ㈱事業開発本部
担当:武田・中村
【URL】https://www.p-supply.co.jp/
●YouTubeにて装着方法などが確認頂けます。
<パシフィックサプライモーリフト>
https://www.youtube.com/channel/UCD-gczUgHdJRvVUwmUfcIlQ?view_as=subscriber
*チャンネル登録をお願い致します。
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