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パラリンピック金メダリストと一緒に走ろう!

スポーツ

パラリンピック金メダリストと一緒に走ろう!

義足トップアスリートによるランニング教室 想いをのせたバトンをつなぐ!

パシフィックサプライ株式会社 事業開発本部

2018-08-16

平成最後の夏、南アフリカ共和国から義足のパラリンピックメダリストが日本にやって来ました!
その名はアルヌ・フォーリー(ARNU FOURIE)選手。
自国内でも子ども向けにイベント活動している彼が、日本の子どもたちに向けてランニング教室に参加してくれました。
義足を使っている子もそうでない子も「速く走れるようになりたい!」という願いは同じ。
トップアスリートと過ごした数時間は子どもたちの心にいったいどのような想いを残したのでしょうか。

大阪と東京の2か所で開催された子ども向けランニング教室のうち、今回はパシフィックサプライ本社が
ある大阪府大東市で行われたイベントをレポートします。
大阪でこの夏初めての36℃超えを記録しました。
記録的な猛暑の始まりとなった日に、どのような熱い想いが参加者に生まれたのでしょう。

地域密着 × パラリンピックメダリスト × みんなで走ろう

 3連休の初日となる2018年7月14日(土)『みんなで走ろう バトンをつなぐ 想いをつなぐ 義足のトップアスリートによる ランニング教室』と題した
子ども向けランニング教室を開催いたしました。
 
 開催場所の『アクティブ・スクウェア・大東』は2013年3月に閉校となった旧深野北小学校跡地をリノベートした施設です。パシフィックサプライ本社がある地元・大東市の活性につながる活動ができればとお願いしたところ、今回のイベントに快くご協力くださいました。
 
 小学校の校舎、体育館、運動場といった名残に大人はどこか懐かしさを感じる空間でしたが、南アフリカから初来日されたアルヌ選手の目にはどのように映ったのでしょうか?
 

初開催イベント 満員御礼!

 イベント開催に先立ちWeb告知と合わせて近隣の小学校や施設にチラシを配布したところ、すぐに多くの反響があり、あっという間に30名の定員に達し満員御礼となりました。
 
 義足を使っている子、身体の一部が欠損している子、近隣の小学生、男の子も女の子も、小さい子も大きい子もみんな「かけっこが速くなりたい」という想いで参加してくれました。
 
 徒歩で地域から参加してくれたご家族からはるばる山口県から参加してくれた方まで、当日は高温注意情報が出されるほどの厳しい暑さにもかかわらず、多くの方がイベントを楽しみ盛り上げてくださったことをスタッフ一同うれしく思いました。

金メダリスト アルヌ・フォーリー選手ってどんな人?

1984年南アフリカ共和国で生まれのアルヌ・フォーリー選手は、世界中から選ばれたトップクラスの義足アスリートが集う「チームオズール」の一員です。
 
超一流のアスリートとしての実績を持つ彼が、南アフリカ共和国から遠く離れた日本の子どもたちにも走り方をレクチャーしてくれる機会はとても貴重なものです。
 
彼が事故により足を失ったのは18歳の時です。
南アフリカ共和国の有名ラグビーチームでプレーしたいという夢が突然絶たれてしまったのです。
足を切断した自分がまるで別人になってしまったようだと悲嘆にくれ、義足姿を人に見られないように…と
長ズボンで隠していました。
周りの視線がまるで自分を物珍しいものを見ているかのように映ったのでしょう。
そんな失意の底にいたアルヌがもう一度スポーツに打ち込もうと思うまでには、数年の時を要しました。
 
その後、義足の陸上選手として努力を重ねて成長した彼は、2008年の北京パラリンピックに初出場。
2012年のロンドンパラリンピックでは男子4人×100Mリレーで金メダルに輝きました。
陸上競技で世界一になるという夢を叶えたのです。
 
アルヌ選手が教えてくれることは、走り方の技術面だけではありません。
その紳士的な態度や笑顔から、彼の考え方や生き方までが、力強いメッセージとして参加者に伝わりました。

ギラギラした夏の日。ランニング教室がスタートしました

 参加した子どもたちは体育館で受付後、ブルーのオズールTシャツに着替えます。
 残念ながら子どもサイズがそろわず、ずいぶん大きなTシャツに袖を通した子もいましたが、皆とっても嬉しそう。
 おそろいのシャツに身を包んだ子どもたちが、イベント前のタイム計測で笑顔を見せて走り回る姿は、まるで小さな<チームオズール>が結成されたようでした。
 「スポーツが与えてくれたこと」というテーマで語るアルヌ選手に耳を傾ける子どもたち。
 陸上に打ち込むことで生きがいを取り戻したアルヌの話を真剣な表情で聞いていました。
 義足を見たのは初めてという子がほとんどでしたが「義足ってかっこいい!」と興味津々で、緊張しながらも積極的に質問してくれました。

「自分自身を大切にしてほしい」
「人生の目的を見つけ出して夢を叶えよう」

 切断後のどん底の精神状態から、金メダリストにまで駆け上がったアルヌの言葉は、子どもたちの心に
どのように響いたのでしょうか。

 トークショーの後は、速く走るためのコツやテクニックのレッスン開始です。

 最初は少し遠巻きにアルヌ選手を見ていた子も、一緒に身体を動かすうちに緊張が緩んでいき、全員に笑顔や
歓声が広がっていきます。
 人種や障害、年齢といった壁を超えたスポーツの力と、子どもたちの柔軟さや吸収力を目の当たりにしました。
 

 休憩時にはオズールTシャツへのサインや記念撮影をねだる子どもたちや保護者が、アルヌをぎゅうぎゅうと囲んでいました。
 言葉は通じなくても、彼の紳士的な物腰と柔らかい笑顔にすっかりファンになってしまい
「一生の宝ものにする!」と満面の笑みを浮かべる子もいました。

 その後、運動場に出ていよいよメインイベントのリレー対決!
子どもも大人も、義足の人もバギーの人も、まだまだ暑さが残る運動場に、汗を流して全力で駆け抜けました。
 
 アルヌ選手がリレー前に履き替えた板ばねタイプの走行用義足を目にして、
「テレビで見たことある!」
「かかとはないの!?」と興奮したのは子どもたちだけではありません。

 走行用義足は、気持ちよく速く走れるように実際の足より長く設計されていて、歩くには逆に使いにくいという
説明に大人も子どもも「なるほど」とうなずいていました。
 
 走行モードのアルヌ選手の姿に「勝てるわけないよ~」と思わず口にする子もいましたが、一発勝負のリレー本番では、
彼直々の指導によってレッスン前より早く走れるようになった姿を、お父さん、お母さんに見せることができたのではない
でしょうか。
 

 みんなが笑顔で幕を閉じたリレー競争。
 優勝チームには記念品としてアルヌ選手直筆のサインが贈られました。
 1枚ずつ異なるメッセージを書いてくれたところに、アルヌの優しさを感じました。


 誰も暑さで体調を崩すことなく、2時間あまりのイベント笑顔を無事に終えることができたことに感謝します。

近隣から参加された方々に感想をうかがいました。

「子どもが小学校からもらってきたチラシを見て珍しいなと思って参加しました。
 恥ずかしながら大人なのに義足のことや障害者スポーツのことをよく知らなくて…
 今日は子どもとともにいい勉強をさせてもらいました」

「親が走り方を教えようとしても反抗するのに、アルヌ選手の言うことは素直に聞いて取り組んでいました。
 技術的なことは同じようなことを言っていても『誰から』聴くかで全然違うんですね」

「義足ってすごい!僕も金メダルが取りたい!」 

 単なるかけっこレッスンではなくいろんな学びがあった。そんな声を参加した方々からいただくことができました。
 また、義足を履いた同世代の子どもや大人たちと一緒に走れたことで、義足でもできることはいろいろ
あることがわかったという感想もありました。
 イベントを通じて、パラリンピック選手やパラリンピックスポーツを支える福祉機器にも興味を持っていただけたようです。

アルヌ選手から日本の子どもたちへのメッセージ

「日本の子どもたちは躾がよくて熱心」今回のイベントを通じてそんな印象をもったというアルヌ選手。

 しかし、彼が子どもたちに伝えたいことは国や人種を問いません。
 自分自身の過去の話や、一緒に走ることを通じて子どもたちに
「自分自身を幸せにしてほしい」
「夢を見つけて叶えてほしい」
というメッセージを刻み込んでくれました。
 
 子どもたちもアルヌの姿から「諦めなければ夢は叶う」という想いを、確かに受け取ってくれたことでしょう。
《参加者のアンケート》 ●走り方を教えて貰ってから、本人も意識して動かしていて、ちょっと早くなったように感します前より走るのが楽しくなったそうです。
 義足にも興味津々で、車椅子にも乗ってみたいと言ってました。参加させていただき、ありがとうごさいました。

●得難い経験でした。娘はその日の日記に速く走るポイントを書き留めていました。次回があればまた参加したいと思います。

●とても勉強になりました。これまで義足や義手の方に近づく機会もなく、考えたこともなかったようなことが、身近に感じ、
 いろいろと考えることができました。
 子どもたちも、障害者競技等にも興味を持ったようです。ありがとうごさいました。

●体育館は想像以上に暑く、義肢装具を装着されている方は大丈夫だったのか?と子どもから質問され、
 改めて暑さ対策を痛感しました。

●こどもは、目の前で選手の走りを見ることができて、義足のすごさを感じたと話していました。
 なかなか、経験のできない貴重な体験をさせていただきありがとうございました。

●貴重な体験をさせていただきありがとうごさいました。バーベキューもとてもステキで楽しいひとときを
 過ごさせていただきました。
 こ準備くださったスタッフの皆様、暑い中ありがとうございました。

未来へのバトン

 リレーのバトンは「みんなで一緒にスポーツをする楽しさ」や「障害を持つ子どもの親の願い」を乗せて
つながっていきました。
 1等賞になれた子も、そうでなかった子も、みんなでつなげたバトンの重みを感じることができたようです。
 
 
 大人も子どもも、健常者も障害者も同じフィールドでスポーツができる環境というのはまだまだ国内では整っていません。
 「安全性が保証できない」「他の子どもへ迷惑がかかる」などといった理由で、地域のスポーツクラブが
障害のある子どもの受け入れを断ることもあるそうです。

 また、義足や車椅子の機能的な問題で日常生活以上の負荷がかかる活動が制限されてしまうケースもあります。
 スポーツを通じていろんな体験をしてほしい、そんな当たり前の親の願いも、義足を履いているというだけで
叶わない社会というのは悲しすぎます。


 パシフィックサプライでは、義足の子どもがスポーツを楽しむ機会を奪われないために、まだ国内ではあまり
試すことができない子どもサイズのランニング用義足のデモ機をそろえました。
 大人になってからではなく「今」走りたい、縄跳びがしたい、そんな子どもの願いを叶えたいという思いがあります。
 

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、少しでも健常者と障害者が普通にスポーツを楽しめる社会に
なるよう、これからも皆様とともに活動を続けていきたいと思います。
 
                                    (取材:スイッチオン 平野亜樹)