パシフィックニュース
電動車椅子を定期点検することの効果
車椅子/姿勢保持
環境整備
パシフィックサプライ株式会社 事業開発本部 岡田裕生
2018-12-17
電動車椅子定期点検サービスについて
電動車椅子の使用中に“急に動かなくなった!”という状況になると、使用者はもちろん同行者や、車椅子販売店のサービスマンも大慌ての状況になってしまいます。
電動車椅子を安心・安全に使用するためには、普段からの日常点検に加えて、専門家による定期的な点検が不可欠ですが、自動車のように義務化されていないこともあり、点検を受けずに利用している方が多くいらっしゃいます。多くの車椅子販売店の悩みは“故障してから連絡が入る”ということです。それはKAWAMURAグループの川村義肢株式会社でも同様です。
川村義肢株式会社では「定期的な点検を受けることで、突発的に発生する故障を防ぐことが出来るのではないか?」という思いで、2014年より“川村義肢プロメンテナンス 電動車椅子定期点検サービス”をお客様へ提供しています。このサービスは、点検時期に使用者へ連絡し有償にて点検を受けていただくものです。
どのくらいの台数の点検をしているのか?
4年間で点検を実施した台数は、表のとおりです。開始当初は点検を受けてくださる方が少なく「壊れたら電話するから」と点検サービスの申し込みをお断りになる方ばかりの状態でした。もちろん、“有償でのサービス”ということも抵抗があったのかもしれません。
表中の内訳ですが、“問題なし”はそのままお使いいただける状態。“修理推奨”は現状お使いいただくことはできますが、部品の摩耗等がみられるため交換をお勧めする状態。“要修理”はすぐに使用をやめて修理が必要な状態となります。40~50%の車体が“修理推奨”の状態にあることがわかります。
どの部分が修理推奨なのか
次に修理推奨箇所の割合を図に示します。定期点検サービスを受けている方は、電動車椅子の利用頻度が高い使用者が多いため、タイヤ・チューブといった走行で摩耗する部分の修理推奨箇所が多いことがわかります。
川村義肢の電動車椅子顧客数と電動車椅子の修理台数
川村義肢の電動車椅子顧客数は、約2,500人で、電動車椅子の修理台数は年間約600台となっています。
電動車椅子の修理で工場へ持ち込まれる車体の中には“詳細チェック作業”の依頼がある車体があります。“詳細チェック作業”は、使用者の所に訪問した担当営業が現場では不具合箇所の特定ができないため、工場へ持ち帰って専門家に特定してもらう作業です。
2017年7月から2018年5月(11ヶ月間)での詳細チェック台数は327台でした。メーカー別内訳も合わせて表に示しています。メーカー別で台数に差がありますが、詳細チェック台数は販売台数とほぼ比例しており、故障が多いメーカーがあるわけではないことがわかりました。
点検を受けていれば原因不明の不具合がなくなる?
327台中、定期点検を受けていない車体は324台。定期点検を受けている車体は3台でした。この3台の故障原因は、2台が飛行機搭載時の空港スタッフによるバッテリー接続間違いによるショート。残りの1台は定期点検で修理推奨されていたのですが、なかなか都合がつかずに修理をしないでいたところ不具合が発生したことでした。
定期点検を受けていない車体の詳細チェック割合は12.96%
定期点検を受けている車体の詳細チェック割合は1.96%
定期点検を受けている車体の不具合の内容を考えると実質0%となります。定期点検で不具合の発生を防ぐ効果が出ています。
また、同時期に納品した同一車種で“点検の有無”と“不具合の有無”の比較を行ったものが上表です(上記比較とは集計期間が異なります)。
この集計に関して統計処理を行い、有意差があるかどうかを確認したところ、p値=0.01381となり統計的にも有意差があることが確認できました。
電動車椅子の定期点検を継続して受けることで、誰もが困る突然の不具合の発生は防ぐことが出来そうです。ですが、川村義肢の電動車椅子顧客の6%しか定期点検を受けていないのが実情です。すべての方が定期点検を受けてくださることが理想ですがなかなかそうもいきません。
定期点検サービスの価値を高めて、多くの方に登録していただきたいと思います。
関連情報
© 2017 Pacific Supply Co.,Ltd.
コンテンツの無断使用・転載を禁じます。
対応ブラウザ : Internet Explorer 10以上 、FireFox,Chrome最新版 、iOS 10以上・Android 4.4以上標準ブラウザ