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パシフィックニュース

第8回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019に参加して(サテライト札幌会場)

装具

リハビリテーション

第8回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019に参加して(サテライト札幌会場)

社会医療法人仁生会 西堀病院リハビリテーション課  
理学療法士 佐藤 嶺
公益社団法人北海道勤労者医療協会 勤医協苫小牧病院リハビリ科 
理学療法士 大矢根 有希

2019-05-15

脳血管障害への下肢装具を活用したリハビリテーションに関する「今」を記録するために始まった本カンファレンスも今年で8回目を迎えました。「第8回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019」は、2月9日大阪会場をメイン会場として、石川県金沢市にサテライト会場を設営。また3月16日東京会場をメイン会場として、札幌市と広島市にサテライト会場を設営し開催いたしました。

今回のパシフィックニュースは、札幌サテライト会場にご参加いただいた理学療法士・佐藤 嶺様、同じく理学療法士・大矢根 有希様から当日のカンファレンスのご感想をご寄稿いただきました。

第8回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019に参加して①

社会医療法人仁生会 西堀病院リハビリテーション課  
理学療法士 佐藤 嶺

 
はじめに
2019年3月16日(土)に東京都で開催された『第8回 脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019』に参加させていただきました。
初めての本研修会への参加となりましたが、東京で開催されている研修会を札幌、名古屋、広島会場から中継にて進めていくサテライトスタイルでの研修様式となっており、私は札幌サテライトにて参加させていただきました。

 
本研修会への参加を決めた動機
私の勤務している病院は回復期リハビリテーション病棟を中心とした個人病院です。回復期病棟では整形外科疾患、脳血管疾患患者を中心にリハビリテーションを提供しておりますが、若手スタッフも多く脳血管疾患患者に対する装具療法の知識が乏しく、臨床場面で治療選択されることが少ない現状でした。そこで、積極的な装具療法を推進していくためのきっかけとして装具カンファレンスに参加させていただきました。
 
テーマ:歩行再建における短下肢装具の活用  ~その理論的背景と評価、介入方法について~
 
基調講演・教育講演
基調講演は京都大学の大畑光司先生が、教育講演はねりま健育会病院の田中惣治先生が講師としてご講演されました。内容は装具療法のエビデンスや短下肢装具の運動力学的構造・特徴、各病期における短下肢装具(以下:AFO)のエビデンスについて、AFOの種類とその特徴、選定(シューホーンブレイス、タマラック継ぎ手付き装具、Gait Solution、フットプレート長、前方・後方リーフ等)についての基礎的な装具に関する知識を、臨床的な研究報告内容を踏まえ最新の知見を含めてご教授いただきました。

また、田中先生の講演では「制限と制動の違い」という内容も含まれており、装具療法をこれから学び、活用していこうという段階の私たちにとってはとても参考となることの多い内容となっておりました。

大畑先生のご講演の最後に話された「エビデンスのあるものを推奨するだけでなく、新しい機器・装具に積極的にチャレンジしエビデンスを作りあげていく事が重要」というお言葉にとても感銘を受けました。現状の治療技術で足踏みをするのではなく、より患者様の身体機能・生活に還元できるこれからの治療技術の発展に目を向けていきたいと思いました。
 

一般演題
4名の先生方がAFOの活用による様々な視点での取り組みを発表されました。
 

  1. 重度感覚障害を呈した急性期脳卒中片麻痺患者の歩行能力の経過と関連要因の検討
  2. 急性期病院で長下肢装具を作製した脳卒中症例の回復期リハビリテーション病院退院後の経過について一症例報告
  3. ジャンプ動作が慢性期脳卒中片麻痺者の歩行に及ぼす影響
  4. フォアフットロッカーを奪還せよ~真の歩行再建のために~

 
シンポジウム
「短下肢装具療法~より良い生活を目指した歩行機能向上のために~」

座長:京都大学 大畑 光司先生 、ねりま健育会病院 田中 惣治先生
シンポジスト:広南病院 大鹿糠 徹先生
ねりま健育会病院 樋口 明伸先生
桔梗ヶ原病院 島本 祐輔先生
 
3名の先生方が急性期から回復期、維持期、外来でのフォローアップまでに至るご講演をされました。長下肢装具(以下:KAFO)の適応やカットダウンのタイミング、またSemi KAFOやAFOの選定・活用について等より臨床的な内容となっておりとてもイメージしやすく参考になりました。発症早期からの装具療法による効果を実感しました。

課題として、急性期の段階から積極的な装具作成を行うケースは少なく、急性期と回復期の機能を備えている病院にて早期から装具処方を行っているケースが多いという現状を知り、今後の課題となることを感じました。

また、維持期・外来通院でのリハビリテーションにてボトックス治療を併用した装具脱却への取り組みを多職種共同のもと行っている施設もあり、実際に装具脱却に成功したケースが複数存在するということに衝撃を受けました。治療用装具としてKAFOやAFOを使用するイメージと、更正用装具として維持期・外来・在宅リハにおいて装具を使用するイメージを私自身は持っていましたが、運動麻痺の回復がプラトーに達した後でも患者・利用者の装具脱却の希望に沿い、取り組むという“攻めのリハビリテーション”の視点を持ち、セラピスト側が装具脱却を諦めてはならないということを教えていただいたように思います。
 
最後になりますが、このような貴重な研修会をサテライトスタイルにて、より多くの方々に参加していただける(参加可能な)方法を企画し開催・運営されましたパシフィックサプライ様に心から感謝致します。

 


脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019チラシイメージ

 

脳血管障害へのカンファレンス2019に参加して②

公益社団法人北海道勤労者医療協会勤医協苫小牧病院 
リハビリ科 理学療法士 大矢根 有希

 
はじめに
 今回平成31年3月16日に開催されました「脳血管障害への下肢装具カンファレンス2019」に参加させていただきました。今回のテーマは短下肢装具に焦点を当てた講演でした。当院では回復期病棟での治療介入中の治療用装具、在宅生活を見据えた更生用装具として短下肢装具を使用しますが形状や継手などの選択に難渋することが現状です。そのため当院でも院内での装具カンファレンスなども行いながら、より最適な装具を早期に提供できるよう学習を深めているところです。他法人・院所での装具療法の取り組みについて興味があり本カンファレンスに参加を希望しました。

 
基調講演・教育公演
基調講演は京都大学の大畑光司先生、教育公演はねりま健育会病院の田中惣治先生にそれぞれ講義をしていただきました。大畑先生からは「歩行再建における短下肢装具の活用」のテーマで急性期~回復期~生活期の3期での短下肢装具使用のエビデンスについて海外の論文も紹介していただきながらの内容でした。田中先生からは「短下肢装具のバイオメカニクス」のテーマで歩行周期のフェイズ毎のCOPや関節モーメントに着目しながら健常歩行と異常歩行での違いについて動画を交えながらの講義でした。

両先生ともに最新の下肢装具にまつわる情報をわかりやすく説明していただき非常に勉強になりました。特に印象に残った点を下記にまとめます。
  
・短下肢装具には反張膝の改善に効果はあるが、全ての歩行中に反張膝の生じる症例に適応はしない。大腿四頭筋やハムストリングスの過緊張による場合は長下肢装具の適応となる。
・短下肢装具導入における歩行速度は導入時期での有意な違いはなく同程度に到達すること。
・運動分析は関節運動に基づくものに偏っている。床反力を推測し関節の運動方向と力の大きさに着目しての観察が必要であること。

 
臨床場面で患者様の動作に対して介入するに当たって運動分析は欠かせませんが、動作を上手く行えない要因の推測は「~筋の筋力低下」や「~関節の関節可動域の制限」といった局所レベルの分析になりがちでした。目的とする動作の達成のためにはどのようにCOPを動かし、各関節に動きをもたらす必要はあるのかを吟味しながらのアプローチや補助具の検討が必要と再認識しました。

 
一般演題・シンポジウム
一般演題では急性期からの長下肢装具使用による歩行能力の向上についてやジャンプ動作が歩行に与える影響、フォアフットロッカー改善に向けてMP関節の可動性に着目した発表など4演題の発表でした。札幌会場はこれまで私が参加した際はこれまで大阪会場からの中継のこともあり関西圏の方の発表の聴講が中心でしたが、今回は関東圏の方の発表を聴講することができ新鮮でした。

シンポジウムは「短下肢装具療法~より良い生活を目指した歩行機能向上のために~」のテーマの下、急性期、回復期、生活期のそれぞれで勤務をされている先生方から日頃の診療の中で留意していることや力を入れていることを紹介していただきました。当院では脳血管疾患の急性期治療に関わる機会は少なく、勉強になりました。


 
おわりに
当院でも脳血管障害に対して下肢装具療法に取り組んでいますが、治療経過で難渋する症例が多く、地域内での連携不足や私も含めた職員の知識・経験不足もあり今後の課題と考えています。

下肢装具療法も先人の方々の研究成果の積み重ねでエビデンスが示されていますが、ただ作成し使用すれば患者様の心身機能が向上する訳ではないことは皆様の周知の通りと思います。目の前の患者様に装具使用を検討する中で「どのような動きを促していきたいか」や「どのような運動を学習してほしいのか」をユーザーである療法士が認識をした上での導入を含めて、初めてエビデンスがあると私は考えています。

「脳血管障害への下肢装具カンファレンス」には当院からは2016年から参加、私個人としては2017年開催時に初めて参加をさせていただいて以来毎年参加し、今回で3回目となりました。下肢装具療法を含めた脳血管疾患に対する介入方法に対しての情報のアップデートや道外での下肢装具療法の実態について知る機会として非常にお世話になっています。次回もまた参加したいと思います。

脳血管障害者への下肢装具カンファレンス2013(名古屋)

脳血管障害者への下肢装具カンファレンス2015(岩手・盛岡)

脳血管障害者への下肢装具カンファレンス2018(福岡)
 



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