パシフィックニュース
「実践!下肢切断・義足リハビリテーションセミナー」を受講して
義肢
リハビリテーション
社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
理学療法科 理学療法士 常盤尚子
2020-02-03
2019年11月弊社主催にて、「実践!下肢切断・義足リハビリテーションセミナー」を開催いたしました。より実践的な内容をめざし、評価、介入、義足の基礎知識を学んだのちに、症例検討とディス力ッションによって、より能動的に義足リハビリテーションを学んでいただくためのセミナーです。
今回、本セミナーにご参加いただいた愛仁会リハビリテーション病院・理学療法士常盤尚子様からご寄稿をいただきましたのでご紹介させていただきます。
セミナーに参加した経緯
2019年11月30日パシフィックサプライ株式会社の「実践!下肢切断・義足リハビリテーションセミナー」へ参加させていただきました。私自身、ケーススタディを通し、いろいろなヒント・学ぶ機会を頂きましたので、ここにご報告させて頂きます。
まず、私自身が、義足に興味を持ち、このセミナーに参加するきっかけとなった経緯を簡単に述べさせてもらいます。
当院では、グループ活動という取り組みがあり、筋電図グループ・車椅子グループ・心臓リハビリテーショングループなどがあり、その中の1つとして、装具グループが存在します。そこでは、装具検討会(2回/週)と称し、装具作製者に対し、主治医・ご本人・ご家族・担当理学療法士・義肢装具士・装具グループ理学療法士が集まって、装具の必要性の有無や装具の選定を行う場を設けています。
また、装具外来においては、退院後のフォローアップにも力を入れてまいりました。切断者に対する義足作製の場合、長期で関わることが必要となり、回復期病院へ入院中に本義足作製を行うことがないため、装具外来では、退院後の生活を聴取し、創部のチェックや歩容のチェックを行いながら、本義足作製へと進めて参ります。
しかし、当院(回復期病院)での入院患者数の割合において、切断者は年間1桁程度と多いとは言えず、各セラピストの切断者に対する経験も少ない現状です。そのため、切断者の創部チェックや義足作製への手順など義肢装具士へ随時相談しながら進めて参りました。また、義足作製者に対する介入方法に関しては、模索しながら進めている現状でした。
そのため、今年度から義足班を立ち上げ、月に1回症例検討を行う場を設け、ディスカッションを重ねて参りました。そのような中、今回御社の義足セミナーのお話を頂き、これまでの自分自身の振り返りもかね、また普段からの疑問を少しでも解決したいという思いで参加させて頂くことになった次第です。
切断者に対する現状の問題点
まず、切断者に対する現状の問題点として、「入院期間の短縮」「医療スタッフの経験不足」「切断者の重篤化」「切断者の高齢化」や「機能向上に伴う複雑化と価格上昇」などが挙げられています。切断の原因が、血管原生によるものが多くなってきている現状があり、患者の高齢化、再切断や5年以内に反対側の切断に至るケースもあると言われています。
現実には、疾病により切断に至った方や高齢者のように、体力的に弱い切断者が増加しているのも事実です。このような方が義足を簡単に装着して安全に立ったり歩いたりするためには、その能力を補うために別な意味での高機能部品の開発が課題となってきているわけです。
一方で、切断者が義足を装着し、安全に、より健常者に近く、エネルギー消費の少ない義足歩行を実現するためには、適合したソケット、適切な部品選択、適切なアライメントの設定および切断者の筋力強化が必要かつ、早期対応が重要であると言われています。
切断者の評価について
今回のセミナーでは、大阪人間科学大学に在籍されている長倉祐二先生による「義足リハビリテーションの概論と訓練ポイント-理学療法士の観点から-」とういう演題からスタートしました。
特に印象的な事として、「筋力が何を意味するのか?」「切断によって確実に筋力が変わるが、単に筋力があるから大丈夫と思ってよいのか?」というような問いかけがありました。
私自身、切断者の評価をする際、筋力を計測してきましたが、義足はつけずに、股関節や膝関節周囲の筋力を計測してきました。義足をつけた状態で、どれだけ筋力を発揮することができるのかをしっかりと評価し、また運動していく必要性を改めて考えさせられました。
さらに、プログラム立案や評価方法も詳しく説明してくださり、動画による解説もあり、非常に理解しやすい内容でした。
次に、御社の義肢装具士・橋本寛氏による、「義足リハビリテーションの概論と義足調整ポイント-義肢装具士の観点から-」という演題の発表を聞かせていただきました。
その中で、断端部管理の重要性、患者教育の重要性について講演してくださり、切断者を担当する際、誰もが悩むであろうことを、丁寧に説明して頂きました。また切断者の活動性に合わせたパーツ選定について、義肢装具士の目線から解説してくださり、欧米では、切断後いかに早く立位訓練に移行しているかの紹介も受け、そのスピードに衝撃を受けました。
さらに、この演題を通し、義足作製は、実用歩行のためだけではなく、切断者の様々な生活場面を想定し、作製されるべきものであるという事も学ばせてもらい、義足の幅の広さを感じました。
ケーススタディでは、2症例を通し、介入時の疑問などを参加者とディスカッションを行ったり、長倉先生や橋本先生にもそれぞれ解説していただくなど、有意義な時間を過ごす事ができました。
実践!下肢切断・義足リハビリテーションセミナー1
実践!下肢切断・義足リハビリテーションセミナー2
最後に
今回のセミナーを通し、理学療法士として、医療において義肢装具を用いたリハビリテーションで、専門性を十分に活かしていけるよう、さらなる努力が必要であると感じさせられました。
また、長倉先生の話にもありましたが、第52回の理学療法学会学術大会において、装具に関する演題は全体の5.4%、義肢に関しては0.4%であったとのことです。症例数が少なく、エビデンスになりにくいことも影響しているのではとの見解でしたが、今後も積極的に学会発表等に参加していけるよう、自分自身の経験や知識を増やしていきたいと思います。
この度は、このような貴重な発表の機会を頂き、誠にありがとうございました。
※こちらのセミナーは期日が過ぎたため、受付終了致しております。
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