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パシフィックニュース

障害者の就労のための支援機器と環境の紹介 ~ 脳性麻痺の方の事例から ~

AAC(コミュニケーション)

環境整備

障害者の就労のための支援機器と環境の紹介 ~ 脳性麻痺の方の事例から ~

郡司芳枝
メイ・ソリューション株式会社 代表取締役 木島真央

2022-01-05

前回、郡司さんに就労されるまでの経緯やお仕事観、夢についてお話を伺いました。
 
2021年8月2日号
「生きているうちは働きたい!」ITスキルを習得し就労を実現した脳性麻痺の方へのインタビュー
 
具体的にどの様な機器を活用しながらお仕事をされているのか知りたい!というお声を多くいただきましたので、機器活用と環境調整についての紹介をお願いしました。
また、郡司さんのサポートに携わっている支援者である木島さんにも組織および事業の紹介、郡司さんへのサポート内容をお伺いしました。

 






障がい者による就労と自助具の関係  郡司 芳枝


「障がい」とひと言にいってもその区分と程度は色々で、どれ一つ同じ型というのが無いことを踏まえて、出来るだけ就労に結びつく自助具の用い方が今後の課題であると思います。

リハビリからのスタート!

仕事のスキルを上げる事は誰でも考えていることと思いますが、私はまず身体を整えることからスタートしました。
当時の私は、脳性麻痺の影響で筋緊張が強いため、常に身体中が痛く、特に股関節痛がひどくて寝返りもできない状態でした。さらに、重症貧血も併発し、寝たきりになっていた状態からのリベンジでした。まずはリハビリを兼ねて、区の障がい者センターに通所しながら身体を整えると同時に、何か仕事がしたいとパタパタさせていました。まるで小鳥が羽ばたく練習をしてる様に(笑)

キーボード入力方法の模索

まず、パソコンの就労に欠かせないのがキーボードを打つ事。ですが、私は入力作業を行うにあたってホームポジション(10本指でキー入力するための基本の指の位置)なるものが出来ないため、指一本で打ち込む感じです。そこで、何か私たちのようなキーボードを使えない者にも打ち込みが出来ないかと思っていた矢先、就労を担う事業所の指導員が〝flick typer〟や〝Phone2PC〟という、スマホやタブレットからパソコンに入力ができる機器を見つけて来てくれました。マウスもこれで動かせるし、音声入力の機能も付いてました。


Phone2PC

Phone2PCの使い方
〝マウス制御〟をタップ
画面が変わったらこの画面から指でなぞってポインターを移動させる
音声もファイル変換で文章化出来る

 

パソコンスキルを学べる機会を捉えて講習に参加、このきっかけで手応えを掴めました

以前よりパソコンを使った仕事に興味があり、独学で調べたり、専門誌を購入して学んでいました。ホームページを作れるようになりたい!という思いがあり、アンテナを張っていたところ、区の障がい者センターの指導員の方が私に丁度良い講習会がある事を教えて下さり、やっとパソコンスキルを上げるきっかけに出会いました。(その時期私は寝たきり状態からの復帰のためセンターでリハビリをしていたところでした。)
色々なソフトを使いランダムに仕事に役立つ講習が次から次へと開催されていたので受けられるだけ受けてみました。自分に何が向いているのかはまだ分からない状態でしたが次から次へと受講し、内容がどれもこれも感動もので、こんなことも出来るんだ!と毎回ワクワクしていました。学んでいる時は、本当は何をやりたいのか決め兼ねていましたが、一つ一つソフトの性質が分かってくるうちに学んだことが上手く繋がっていきそうな手応えを掴めるようになり、もしや仕事も出来るかもと感じました。
しかし、マウスやキーボードを操作して思い通りに作り込むのは難しく、脳性麻痺特有の手が硬直したり震えたり、ポイントが合わなかったり、細かい作業が難しいといった症状もあり普通にやっていては出来ないな、とも感じていました。

福祉機器や自助具の活用

障がい者就労を支援する指導員の先生方は流石にその道のプロですね。様々な福祉機器がある事を教えてもらい、自分でも調べながら、何とか今のコンピュータを作動させる自助具を確立させました。

例えば、ボタン一つで操作が可能になるプログラマブルキー 、ゲーム用のもので利用出来るキーボードやノートパソコンにもう一つタッチパネル式のディスプレイ を繋いで画面を分割する事で画面を切り替える手間を割愛したり出来る物を使用してます。これらも自分で探して見つけたものです。

郡司さま使用機器リストはこちら >>

このような機器を活用することで、出来るだけ体の負担を軽くして、その分長く身体を使って仕事ができる様にを心掛けています。

役立つ情報とか、役立つ道具、そんな事にもかなり敏感に!を心掛けてきました。そのため、SNSもあくまで情報集めのツールとして毎朝目を通して来ました。
目まぐるしく変わる業界ゆえにかなりの努力が必要ですね。(ここは普通の人と同じですね)
そして、道具が分からなくならない様に整理は必須です。Webサイトのコーディング時は片方にエディター (文章やソースコードなどを書くときに使われる文字編集ソフトのこと)、もう片方には教本や指示書を設置して使ってます。

作りたいものがいっぱいある

今、物作りの分野にも興味を持っていまして、3Dプリンター を使って自助具を自作したいと思っています。作りたいものがいっぱいあるんです。
例えば、私はカーテン(ロールスクリーン)の開け閉め時にまっすぐ引くのが難しいのでそれを補う自助具や、ボトルキャップを開けるのを補助してくれるもの、知り合いから依頼があり舌圧式のスイッチを押す道具なども作りました。最近は、1回分ずつ薬を仕分けできて使いやすいケースを作成中です。設計までは完了したのであとは作る準備をしています。
ちょっとした暇を見つけては、アイデア探しや活用できそうなものを見に、百均や雑貨店、家電量販店をうろついています。
ペットボトルのキャップを空け易くする自助具 蓋を空け易くする
設計図 デザイン重視でやってみましたが…
舌圧スイッチ 舌の動きを利用してスイッチングする
車いすのブレーキレバー ブレーキレバーを長くすることによりブレーキを掛け易くする
 
私が就労をしていく中で、一番問題や不安になったのは学生時代からの事を引きずっていたと言うことでした。普通の人の中で障がい者(特に重度の)が付いて行くことは相当工夫や努力が必要なので、付いて行くのは確かに難しいことだと思います。今はeラーニングとかネットからのビデオでも学べますが、何か〝取っ掛かり〟が必要でした。何からどんなふうにという、それを見つけるまであれこれ見聞きしていました。ネット業界は日々移り変わりが激しいので“今”を保つのも大変でしたね。
自分がやる気を持ち続けるなら、困った時に助けてくれる人が必ずいます。自分がやりたいことをアピールすること、そして自分ができる方法を模索すること、これが大事だと思います。

誰かの参考になれば幸いです。
もう一度言いますが私は、" 一種1級の脳性麻痺 ”の障がい者です。

 







郡司さんへのサポート  木島 真央
 

組織および事業の紹介 >>

郡司さんとの出会い

私は、仙台市障害者バーチャル工房事業「せんだい庵」を通じて、郡司さんと出会いました。きっかけは、バーチャル工房事業で実施する講座の周知で市内の障害者福祉センターを訪ねた際、センターの職員さんが「関心を持って頂けそうな方に心当たりがある」と言って、郡司さんに講座を紹介して頂いた事でした。
年度末に近い時期の講座でしたが、当時、募集をしていたパソコン操作を指導していくためのノウハウを学ぶインストラクタ講座に参加して頂いたことを憶えています。
そして年度が変わり、新しい講座へも参加頂く事が出来、長いおつき合いとなっていきました。インストラクタ講座に続いて参加頂いた講座は、デジタルデザイン講座として位置づけた画像編集講座であり、主にアドビ社製のフォトショップとイラストレーターの基本を学ぶ内容でした。
はじめて参加頂いた講座はインストラクタ講座ではありましたが、以前からデジタルデザインに関心を持っていたとの事から、熱心に受講されていました。
その後も、バーチャル工房事業で企画したCAD講座やHTML講座を受講され、さらに受講された皆さんの集まる機会として実施していた勉強会(後の工房活動)にも参加されておりました。

※過去(平成18~22年度)仙台市障害者バーチャル工房事業「せんだい庵」時代

現在(平成23年度以降)仙台市重度障害者コミュニケーション支援センター時代

仙台市重度障害者コミュニケーション支援センターとして、郡司さんのパソコン用入力機器に関する情報提供および試用機会の提供を行いました。
私は、平成23年度より仙台市障害者バーチャル工房事業から仙台市重度障害者コミュニケーション支援センターの担当に変わりましたが、パソコン入力機器の導入支援というアプローチが続いておりました。
まずは、平成23年秋に情報・通信支援用具(日常生活用具)の制度を使った「キーガード」や「トラックボール」、両腕を支える「支持具」の導入、続いて平成31年冬に「タッチ操作できるディスプレイ」や「シフトキーやコントロールキー、クリックロックが出来る機器(センターオリジナル)」の導入をお手伝いしておりました。センターオリジナルの機器の販売については、創業時より意思伝達装置や情報・通信支援用具を扱うメイ・ソリューション株式会社と連携して進めていきました。

試用機会の提供としては、仙台市重度障害者コミュニケーション支援センターの備品を試して頂き、導入していく機器の選定等や手配を担当する業者さんへの連絡等を行っていました。
思い出深いエピソードとしては、タッチ操作できるディスプレイの検討の際に、着席した位置でディスプレイの隅々まで手が届くかを確認するため、21インチ等のディスプレイサイズを発泡スチロールの板で切り出して試したことでした。

制度を利用した機器導入以外にも、新しく入力機器を整備する中で郡司さんが興味感心を持つような入力機器があった場合、それらの機器の紹介を行っていました。記憶に残る機器では、スマートフォンへ入力した文字が、そのままパソコンへ文字入力される機器や、ALSの患者さんの要望に応えて作った機器ですが、意思伝達装置で用いられるようなスイッチを押すことでシフトキーやコントロールキー、オルトキー、そしてマウスのクリックロックが出来るセンターオリジナルの機器が挙げられます。

就労継続支援B型事業所「せんだい庵」(せんだいアビリティネットワーク)

郡司さんは、平成29年冬に開設された就労継続支援B型事業所「せんだい庵」を利用されておりました。利用を通じて、自身の健康管理等の生活支援や新しい技術や知識を身につけるための訓練、そして依頼を受けた作業に取り組んでいました。
ここでは、日頃の訓練と実際に依頼を受けた業務に取り組んでいく時間がありました。日頃の訓練では、技術の向上として3次元CADソフトの「Fusion 360」の操作方法を学び、そこで作成したデータを用いて3Dプリンターで出力するなど、新しい技術を獲得する為、積極的に挑戦されておられました。
また、技術面と合わせて、仕事の依頼者とやり取りをしていくためのビジネスメール等のコミュニケーションスキルも学んでおられました。

パソコンボランティア養成講座および派遣に関する声がけ

私は、これまでバーチャル工房事業を通じて学んできた1つであるインストラクタ(講師業務)に関する活動機会として、宮城県が実施するパソコンボランティア養成講座の受講と、その後、パソコンボランティアとして登録を行い、派遣事業を通じて活動を広げる事の声がけを行っておりました。
郡司さんはその案に関心を示し、パソコンボランティア養成講座を修了され、後に登録、そして指導機会を得ておりました。
パソコンボランティア養成講座で学んだ事は、その後、就労継続支援B型事業所を利用した際の後輩指導にも役立っていたようです。

末筆

郡司さんと出会ってから10年以上の時間が経過しますが、今でも出会った頃と変わらぬチャレンジ精神で様々な事に挑戦されているという印象です。
デザイン業界で標準的に使われている高価なソフトをご自身で購入するなど、日頃の行動力にも感心させられておりました。
その様な人柄の郡司さんとは、ご一緒する中でいつもワクワクするような事を考えることができ、私自身も楽しい時間になっています。

木島真央
  • メイ・ソリューション株式会社 代表取締役
  • コム・イネーブル-重度身障者の意思伝達を支援する会- 代表
  • 仙台市重度障害者コミュニケーション支援センター

 

編集後記

郡司さんの積極性や向上心にはいつも驚かされ、やりたいことは自分からアピールしないといけないのよ!という言葉がとても刺さりました。その前向きな姿勢やお人柄が木島さんとの出会いをはじめ、たくさんのサポーターや機会を引き寄せているのではないかと感じます。
常に情報収集のためのアンテナを張り続け、自分から情報や知識を得ようと努力する姿に、私も見習わなければと思いました。
郡司さんをモデルケースとし、就労へのきっかけを見つけ、一歩踏み出そうと思ってくださる仲間が増えると良いなと思います。


この動画は、郡司さんが編集されている様子と、実際に郡司さんが編集された動画の一部をつなげた動画です。ぜひご覧ください。

 

(編集)事業開発本部 関根彩香

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