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パシフィックニュース

リフトの理解と導入 ~リフトを使い続けて~

リフト・移乗用具

リフトの理解と導入 ~リフトを使い続けて~

社会福祉法人三育福祉会 障害者支援施設シャローム浦上台
生活支援部門長 介護福祉士 岸川洋平

2022-01-17

施設概要:開所は平成14年4月。今年で20年目を迎えます。
主な事業内容としては、施設入所支援、生活介護、デイサービス、相談支援事業を行っています。
主となる障害は身体障害で、定員は51名、ショートステイ5床となっています。自力で歩行が可能な方は4名程で残り47名は車椅子で生活をしています。

リフト導入の経緯

リフトの導入の経緯ですが、施設開所時に在籍していたPTの強い勧めがあり、施設開所当時からリフトの導入をしています。海外メーカーのリフトを各階に2台ずつ、計4台のリフトを導入しました。開所当初はリフト対象の利用者もいなかった為、使用頻度としては低く、本格的に使用を始めたのは開所して2年目ぐらいからになります。
本格的な使用を始めてから約18年になりますが、現在では施設全体で7台のリフトを使用しています。

現在のリフトに至るまで

開所時に導入した4台のうち2台がモーリフトのパートナーという機種でした。モーリフトはハンガー部分が4点式になっており、他社メーカーのリフトは2点式のものでした。

初期のリフト「パートナー」(※1

他社メーカー製 ハンガー部分:2点式

モーリフト ハンガー部分:4点式

当施設では、スリングを4点でかけることができ、アームが上下する時に揺れが少なく安定しているモーリフトを使用する職員が多く、ご利用者さんからも人気がありました。
約18年間という年月の中で何度かリフトの入れ替えを行ってきました。
入れ替え時には、日本製のもの、海外製のものなど様々なリフトのデモ機を借りて、都度職員・ご利用者さんに意見や感想を聞き検討をしてきました。
メーカーによりそれぞれ特徴があり、ハンガー部分が2点式・4点式のもの、同じ4点式でも幅や形状が違うもの、リフト自体の重量や安定感の違い、大きさや動かしやすさの違い、リフトの足の開閉が手動・電動のもの、充電がバッテリー式・コンセント式のものなどメーカーにより様々でした。
何台ものリフトのデモ機を使用して、職員やご利用者さんの意見・感想を聞いたところ、当施設ではリフト選びのポイントとして次の3点が出てきました。
  1. ハンガー部分は2点式のものよりも4点式のもの。職員・ご利用者さんともに4点式の方が揺れも少なく安定感があるので安心して使用できる。
  2. 女性の職員も使用するので、リフト自体の重量は軽く、動かしやすく小回りが利きやすいもの。
  3. 充電はコンセント式のものよりも、バッテリー式のもの。その方が充電をする際に場所が限定されず保管に困らない。またリフトを使用中に充電がなくなった場合でも、予備のバッテリーを用意することで、すぐに使用することができるという点でコンセント式のものよりもバッテリー式のものの方が良い。
 
この3つの条件に当てはまるのが、モーリフトスマート150という機種でした。
現在では、7台のうちの5台(※2)はモーリフトスマート150を使用しています。
 

モーリフトスマート150

リフトの活用

主に使用する場面としては、1つ目が車椅子からベッドへの移乗、ベッドから車椅子への移乗です。2つ目はトイレ時の便座への移乗(移乗後にスリングを外さずに、そのまま便座での座位保持に使用したりもしています。)3つ目は入浴時の車椅子から入浴用ストレッチャーへの移乗です。完全防水ではないので、水がかからないよう注意は必要ですが、浴室の湿気などで故障するということは今までありません。4つ目はアームが下まで降りるので、車椅子から床、床から車椅子への移乗も可能です。床で行うレクリエーションの際や、転落時などで車椅子に戻る際にも使用しています。

リフトの操作はとても簡単です。まず、リフトとスリングを用意します。スリングを背中から入れ、足の下に通します。リフトのハンガー部分4点それぞれにスリングのストラップを引っかけます。操作自体はリモコンの上下ボタンのみなのでとても分かりやすいです。



【参照動画】モーリフト使用動画

スリングは、モーリフトブランドのものはもちろんですが、他社メーカーのものでも使用できます。
通常の移乗時に使用するものでも大きさやヘッドサポートがあるもの、リフトで持ち上げた状態でズボンの上げ下げが可能なトイレ用のもの、入浴時に濡れても乾きやすいメッシュタイプのものなど様々な種類があるので、ご利用者さんの体形や用途に合わせたものを使用しています。
また、スマート150の特徴として、リフトでは珍しく折りたたみができるという機能もあります。折りたたむことでコンパクトになり、施設車で外に持ち運ぶことが可能です。ご利用者さんの希望で旅行に行った際などホテルで使用させて頂きました。

​モーリフトスマート150 折りたたみ時

リフトを使用する大きなメリット

  1. リフトを使用するうえで一番のメリットだと思うのは、職員の負担軽減です。腰痛予防、改善につながり、身体面を理由に退職する職員が減り、長く働いている職員が多いです。人材不足の軽減にはなっていると思っています。
  2. 安心・安全に移乗ができます。リフトを使用することで、個人差が少なく、ベテラン職員でも新人職員でも同じように移乗ができます。
  3. 職員2人で抱えての移乗の場合、もう1人の職員が来るまでご利用者さんを待たせてしまうということがあります。リフトを使用することで職員1人での移乗が可能なので、ご利用者さんを待たせることが減りました。
  4. 1人の職員がリフトで移乗している間に、もう1人の職員が別の介助に入れます。職員2人での移乗の方が単純に移乗の時間としてみれば早いのは確かですが、リフトを使用すれば職員1人での移乗が可能なため、もう1人の職員が別の介助に入ることができます。そのため全体の業務としてのスピードはさほど変わらず業務を行うことができます。
  5. 人力での移乗だと、抱える際と降ろす際にはご利用者さんにも力が入り、抱えられている部分には負荷がかかります。リフトでの移乗は身体全体を包むような感じになるので、身体への負荷は減ります。また、集中した負荷が減るため、骨折などのリスクが減り、安全な移乗ができます。

リフトを使い続けて

当施設では、開所時にリフトを導入しました。当時はまだリフトが主流ではなく「介護は人の手で行うもの」とされていたと思います。開所時から導入していたことで、職員・ご利用者さんともにリフトへの理解・導入に関してのハードルはそれほど高くなかったのではないかと思っています。とはいえ、最初から全員の理解があったわけではありませんでした。抱えて移乗をした方が早いからという職員やリフトでの移乗を嫌がるご利用者さんもいました。現在でも新規のご利用者さんの中には嫌がる方もいます。
リフトを使うということは、職員・ご利用者さん双方の理解が必要になってきます。リフトを使用する一番のメリットとしては、やはり職員の身体的負担を減らすということだと思います。介護の仕事と腰痛は切っても切れないものではあるかもしれません。ただ、リフトを使用することで、負担は軽減されます。それにより、職員に長く働いてもらうことができます。また、リフトを使用するということは職員だけではなく、ご利用者さんにも、安全に移乗ができるというメリットがあります。「機械で移乗されるなんて嫌だ」「機械は冷たい感じがする」という話をよく聞きますが、リフトを使用することで、人力での移乗に比べ、ご利用者さんの身体的負担も軽減され安全に移乗することができます。
また、リフト操作時はご利用者さんと正面から向き合えるため、お互い顔を見ながら移乗することができます。不安に思っているご利用者さんに対しては対話をしながら移乗を行うことで気を紛らわせ、不安を少なくすることもできます。
 
リフトを単に使うということではなく、使い続けるためには、職員・ご利用者さんの理解と協力が必要になってきます。職員の都合だけでなく、ご利用者さんにも納得して使ってもらう。そのためにリフトの説明や安全性の説明、なぜリフトが嫌なのか?など話を聞き、どうしたら納得してもらえるか都度考えています。
もちろんメリットばかりではなく、ちょっとしたデメリットもあります。導入にはお金がかかります。機械なので、どうしても故障することがあり修理が必要になってきます。定期的なメンテナンスも必要になってきますし、対象者が多い場合はある程度の台数が必要になります。導入後、業務の変化にれるまで多少時間がかかると思います。ただ、慣れてしまえばリフトは素晴らしいものです。職員・ご利用者さんの負担を軽減できることは長い目で見てデメリットを補えるほどのメリットがあると思います。約18年間という期間、リフトを使い続けられたことは、なによりもリフト自体が優れた機械であり、職員・ご利用者さんの理解と協力があったからだと思っています。なかでもモーリフトは開所時の導入から一度も変更することなく使い続けています。本来、複数台のリフトを導入する場合、違うタイプの機種を導入しますが、検討を重ねた結果モーリフトはどのような場面でも対応ができ、使いやすいため、現在では7台中6台(※2)がモーリフトになっています。
使い続けることで、今ではリフトは必需品になり、リフトがないと辛いという声を現場から聞きます。今後も様々な場面でリフトを使用していきたいと考えています。
 



  ※1:現在、パシフィックサプライでは「パートナー」シリーズのお取り扱いはございません
  ※2:モーリフト スマート150 を5台、モーリフトムーバー180を1台、他社製リフトを1台使用

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