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パシフィックニュース

脳卒中片麻痺者への装具を用いた歩行リハビリテーションとその課題②

装具

脳卒中片麻痺者への装具を用いた歩行リハビリテーションとその課題②

公益財団法人 磐城済世会 松村総合病院 
リハビリテーション課  佐藤知明   佐藤勇太

2022-09-01

弊社オンライン特別プログラムにて、公益財団法人 磐城済世会 松村総合病院 リハビリテーション課  佐藤知明先生  佐藤勇太先生にご講演いただいた内容を2回にわけてお伝えいたします。 
 
脳卒中片麻痺者への装具を用いた歩行リハビリテーションとその課題① 2022.8.16号

第2回目は課題対策のために採用した、セントラルKAFOサービス(画像トレース)での装具作製についてです。

先ほどの流れに続きまして、画像トレースによる当院での作製の流れ、画像トレースの利点・欠点、症例紹介、セラピストの声、当院でのまとめ・課題といった形で、症例を提示させていただきます。

当院での作製の流れ

当院での作製の流れ
図1

図1が画像トレースで作製した場合の、当院のスケジュールになります。
白い矢印が当院での動き、青い矢印が、当院に来院していただいている義肢装具会社の動きとなっております。
セラピストから相談を受け、だいたい月曜日に装具を採型、翌週の火曜日に装具が到着し、その翌日、水曜日に義肢装具士が当院に来院し、微調整を行って完成となる流れです。
水曜日に大きく修正が必要になった場合に関しては、義肢装具会社に持ち帰っていただき、完成次第、当院に直接送っていただくことになっています。


 
図2
 
図2も、当院での作製の流れについてです。青い矢印が従来型の装具の作製日数、オレンジの矢印が画像トレースによる装具での製作日数で、その比較となります。
青い矢印に関しては、採型が水曜日、2週明けた後に仮合わせ、それでだいたい30日頃に完成といった流れになり、約4週間程度かかっていました。
隣のオレンジの矢印に移りますと、月曜日に採型させていただきまして、翌週の火曜日に到着し、微調整の後、水曜日に完成といった流れになっており、仮合わせが省略される分、納期の短縮につながっている状態です。

画像トレースの利点・欠点

次に、納期が短縮された画像トレースの特徴の部分に移らせていただきます。

図3
 
図3で示している通り、納期に関しては、従来型は約4週間程度かかっていました。画像トレースの方は、約10日間。フィッティングに関しては経験上ですが、従来型も良く、画像トレースもさほど従来型とは変わらない印象を受けます。採型時間が(従来型で)40分程度、画像トレースに関しては30分程度となっています。

リハビリのスケジュールは、先ほども説明したように、仮合わせに立ち会いがあるのが従来型装具で、画像トレースでは仮合わせがありません。

ですので、納期が短縮された画像トレースの経験上では、リハビリのスケジュールが立てやすく、仮合わせがないなど、
円滑にリハビリテーションを提供できる可能性があります。

症例紹介

実際に画像トレースで作製した装具を用いた症例紹介となります。
症例紹介の前に述べておきますと、装具を使用する際には、PT複数名で担当し、装具の少ない経験値を全員で共有・知識の標準化を図っておりました。(図4参照)

図4


症例紹介です。
プロフィールは図5を参照ください。
図5
 

先ほどもあったように、当院では装具を作製する前に装具カンファレンスを実施しています。(図6参照)
図6

図6は症例の経過となります。
脳画像を中心に考え、脳画像では錐体路付近に梗塞巣がありました。
また、80代後半という年齢もあり、「予後が不良ではないか」といった意見もありました。ですが、病前ADLは全自立しており、仕事もしていました。
備品装具での歩行練習量は確保できていましたが、フィッティングに難がありました。
ということから、「早期に装具作製が必要ではないか」、画像トレース長下肢装具での装具作製の必要性がうかがわれました。
 

実際に、応用歩行動画をお見せしたいと思います。

(動画1)

(動画2)

こういった形で、階段であったり、下り坂といった場面で歩行練習を実施していました。次は、不整地歩行になります。不整地歩行に関しても、砂利道でも、安全に歩行ができておりました。


図7
図7は症例紹介お2人目のプロフィールです。
 
この症例の方も、備品の長下肢装具で歩行練習を実施していましたが、備品装具に関してはフィッティングが不良で、大腿、下腿にタオルを挟み、歩行練習を実施していました。ですが歩行中にタオルが抜けるなどの危険があり、画像トレースによる装具の早期作製が必要となりました。

歩行練習の様子です。(動画3)

入棟時から後方介助にて、歩行練習を実施。先ほども説明したように、大腿と下腿部にタオルを挟んで歩行練習を実施しています。

動画でも確認できる通り、歩行はぶん回し歩行といった形になっており、初回といったこともあってセラピストが慣れていないこともあるのですが、介助量が多く、歩行も大変で、歩行量もなかなか稼げないといった印象でした。

入棟から20日後、画像トレースで作製した装具が到着した、その日の歩行練習動画です。(動画4)

先ほどと比較しまして、ぶん回し歩行が軽減されております。

セラピストの慣れという部分もあるとは思うのですが、明らかに下肢を真っ直ぐに出すことができており、またリズムよく歩行できているところもありましたので、セラピストからは「歩行量が少し多くなったのではないか」といった意見も聞かれました。

入棟から50日目、画像トレースで長下肢装具を作製した後に、短下肢装具にカットダウンした動画となります。(動画5)

腋窩介助、近位監視で歩行されていますが短下肢装具にカットダウンして間もないため、クリアランス低下、異常歩行が出現しています。異常歩行修正するため、長下肢装具と短下肢装具、軟性膝装具を併用してリハビリテーション実施し、最終的には歩行見守りで自宅へ退院することになりました。

セラピストの声

画像トレースで装具を作製した場合の使用感、セラピストの意見を聞いてみました。(図8)
 

図8


青いカードに関しては、理学療法士の意見、オレンジのカードに関してが、作業療法士の意見となっています。
やはり一番意見が多かったのが、「早期に装具の作製が可能となる」、「装具が軽く、歩行量が多くなったのではないか」、「従来型と比較してもフィッティングの差が少なかった」といった意見がありました。

また、感染対策の観点からも備品装具の使い回し減少、装具使用時の別病棟へ移動減少などの意見も聞かれました。
次もセラピストの意見にはなるのですが、少しマイナスな意見についてもまとめさせていただきました。(図9)
 
図9

一番多かった意見に関しては、やはり装具に慣れていないセラピストが、「2本目の装具を作製するタイミングが難しい」といった意見も多くありました。
また、従来型と画像トレースで作製方法が2パターンあり、ご家族様に説明が難しく、また、金銭的な負担も大きくなってしまうので、経済的な負担も大きくなるというような意見がありました。
また、コロナ禍の影響もあり、作製時に家族説明が、ご家族様に説明するのが難しく、電話などでの対応をするため、2本目の作製などがうまく伝わらない部分もありました。
OT
からは、「 ADL 自立のタイミングが難しい」、「装具の脱着練習をしても、 2 本目で再度練習が必要になるため、また一から練習をしなければならない」など、 様々 な意見が聞かれました。

当院でのまとめ・課題

やはり、早期作製が可能となった分、作製日数による悩みの減少がありました。
また、当院で装具を作製しただけではなく、退院後、地域の連携の強化、フォローアップ体制の強化をしていきたいと思っております。また、今後もセラピストの個々のスキル向上と知識の標準化を進めていこうと考えております。(図10)

 

 図10

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