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急性腰痛をもつ患者に対する、加圧腰部サポーター影響下の体幹筋群についての前向き研究

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急性腰痛をもつ患者に対する、加圧腰部サポーター影響下の体幹筋群についての前向き研究

使用サポーター: ルンボTrain (バウアーファインド)

パシフィックサプライ株式会社 新規事業開発推進部

2023-12-15

はじめに

バウアーファインド ルンボTrainは 腰椎部分にシリコンパットを当て、適度な圧迫で腹圧を高めることで、身体を内側から支え、骨盤を適切な位置へ導き、腰の負担を軽減します。
また、理想的なアナトミカル適合を特徴とする軟性腰サポーターです。
今回は、急性腰痛をもつ患者に対し、ルンボTrainを一定期間使用したことで、体幹筋群に前向きな影響を及ぼした研究レポートを紹介します。

要旨

現在、人口の30~40%程度が、急性腰痛に悩まされている。急性の腰部痛は、初めてか、最低でも6ヶ月、またはそれ以上の、疼痛のない期間の後に起こる疼痛として記述され、最長、6週間程度は持続する [1]。 しばしば、明確な、追跡できる原因はなく、それらのケースでは、非特異的、不特定の腰痛として言及される。
この非特異的な急性腰痛の可能な原因として、筋や筋膜の緊張、靭帯の過度な伸長や短縮が挙げられる。
しかしながら、訴えられる症状と、臨床所見と、画像診断の間にも、明確な原因的なつながりはない[2,3]
症状に明確な原因がないため、腰部サポーターが治療に固有の役割をもつような、多様で、多職種によるアプローチが、最良な治療であると考えられている[4]
しかしながら、腰部サポーターは、負担を減らすことによって体幹筋群を虚弱にする、という議論もある。
腰部サポーターと体幹筋群の生理学的な相互作用の詳細について、特に、腰痛患者の筋の状態については、科学的な文献によって調査されてはいない。この研究は、非特異的な急性腰痛をもつ患者に対する歩行中と静的荷重中の体幹筋群に対して、腰部サポーターがどのような効果をもつかを検証する。
皮膚表面から、重要な体幹筋群の電気的活動を探査するために、表面電極(表面EMG,SEMG)が用いられた。よって、研究する筋群にかかる、負荷の概要を描くことができる。腰部サポーターあり、なしでの負荷状態の筋活動の計測から、この医療用具が体幹筋群にどの程度影響するのかを示すことができた。
また、腰部サポーターや筋活動パラメータの、疼痛軽減への直接の影響を見つけ出すために、患者の疼痛感覚を疼痛日記で記録した。

研究デザイン

前向き、対照、交差研究

方法

 

被験者 全数n =36人の患者;
n =24人の男性、n =12人の女性;
年齢: 29~63歳; BMI[kg/m2]  = < 26
使用サポーター 腰部サポーター
 (ルンボTrain, バウアーファインド)
テスト方法 歩行分析(OEMG)、
トレッドミル、疼痛日記
CTTセンター、BfMGでの静的分析

調査期間 U1:医療的診断後、最大2日後/
U2:U1から1週間後/
U3:U1から3週間後
表面筋電図検査 (SEMG);SEMG電極(Ag-AgCl電極:H93SG,Coviden)
国際基準に適合(SENIAM,www.seniam.org)
(アンプ;Biovision計測システム使用:Tom,DeMe Tec,
 ソフトウェア;GJB)
研究は、以下の体幹、腹部の筋群を計測:
1.腹直筋(RA)
2.内腹斜筋(OI)
3.外腹斜筋(OE)
4.多裂筋(MF)
5.脊柱起立筋(腸肋筋)(ICO)
6.脊柱起立筋(最長筋)(LO);Abb.2,3

参入基準:
・非特異的急性腰痛の患者
・BMIが26[kg/m2]以下
・計測可能な、適切な気質と協調性

除外基準:
・関節可動域の制限、
慢性痛の患者、疾患による変形、
骨折、靭帯損傷、筋損傷、
軟部組織損傷や身体表現性障がい

結果(抜粋)

腰部筋群のEMG

図1:調査した全筋群の振幅の代表値、全グループ、平均4km/h(男女含む)。
X軸:0~100%=単脚の立脚期全体、Y軸:協調パターン、μVによる筋活動。
i=支持脚の立脚期;c=逆脚の立脚期

結果

両足が床面に接触している立脚期には、より大きな腰部筋群の活動が計測された。支持脚の逆側の腰部の筋活動(約35μV程度)は、支持側の活動(約22μV程度)よりも高かった。この基本的なパターンは、サポーターあり群でも、対照群でも、同様であった。
 
サポーターあり群の腰部筋群の活動は、U1~U3(U1=医療的診断後最大2日後、U2=U1から1週間後、U3=U1から3週間後)の3日間の計測日すべてで、対照群の筋活動よりも大きかった(図1参照のこと)。
サポーターあり群の腰部筋群で増加した活動は、対照群と比較して、サポーターを使用した治療から1週間後で約16%から21%程度であり、3週間後では約13%程度であった。

考察

計測が行われる3回のすべてで、サポーターあり群の腰部筋群の活動パターンは、対照群の筋活動パターンと一致していた。サポーターは、基本的に腰部筋群の神経筋制御を変更する効果を持っているわけではない。サポーターを装着した場合に、生理活動による運動のパターンが変化するようなことは、起こらないのである。
3回の評価のすべてで、サポーターあり群の腰部筋群の絶対的な活動量は、対照群のそれを上回っていた。U1においてでさえ、サポーターあり群の活動量は、対照群のそれを上回っていた。このことは、腰部サポーターの効果は即座に起こり、適応期間を通じて、少しずつ増加するわけではないことを示唆する。
サポーターあり群の筋活動の低下は示されなかった。腰部サポーターを3週間装着した後でも、サポーターあり群の筋活動の値は、対照群よりも高かった。このことは、腰部サポーターを装着することで筋の萎縮が起こる、という議論への、反論とすることができる。
サポーターの装着による、習慣的な効果についても、示されることはなかった。サポーターあり群の活動量は、3週間の間、高いレベルにとどまったのであり、対照群のレベルまで低下することはなかったのだから。
最大の強さのデータ(図なし)は、これらを示唆する。腰部筋群の最大の強さに対するサポーターの影響がないことは、明確である。筋委縮が起これば、最大の強さも低下するはずであるから。このようなことは、3週間の治療後にも見られなかった。

視覚的アナログスケール(VAS)を使用した疼痛感


図2:疼痛の変化の代表値:-の値は、初期値(U1)からの低下を示唆する;
U1=医療的診断後最大2日後、U2=U1から1週間後、U3=U1から3週間後。
VASの値:0(疼痛なし)~10(想像し得る最大の痛み)

結果

それぞれのケースにおいて、トレッドミル上での計測前である、評価開始時には、対照群でのVASによる疼痛の値の差は、U1からU2では0.9低下し、U1からU3では0.8低下した。
サポーターあり群では、差は0.4(U1からU2)、と0.6(U1からU3)の低下であった。
 
U2とU3の評価開始前の最初の評価である、U1での疼痛の低下は、サポーターあり群よりも、対照群の方が大きかった。
 
トレッドミル上でのEMGテスト後のVASの値の差は、サポーターあり群では、U1からU2では1、値が低下し、U1からU3では、1.3と値が低下した。
対照群では、数値の低下は、それぞれのケースで0.4にとどまった。
 
トレッドミル上での歩行後の、最初の評価であるU1に対する、U2、U3評価それぞれの疼痛の低下は、対照群よりも、サポーターあり群の方が大きかった。

考察

評価開始前の対照群の疼痛軽減は、サポーターあり群よりも大きかった。この数値は、急性腰痛の正常な治癒過程を反映したものである可能性がある。疼痛の強さが、回復ステージの予測因子とみなされるのだ。
 
様々な評価日に実施された、サポーターあり群の疼痛感覚の差は、低かった。このことは、サポーターによる除痛効果の反映であると考えられる。U1では、疼痛の感覚は、サポーターの効果により明確に低かったため、U2とU3での差が大きくならなかったのだ。
 
トレッドミル上での歩行後は、サポーターあり群と比較して、対照群の方がより強い疼痛を感じていた。
 
サポーターは、受動的な安定性を提供し、同時に、腰部筋群を刺激する効果があるとして、理解されるべきものである。このような効果の組み合わせにより、自然な治癒過程を促進し、早めるものと思われる。

まとめ

サポーターは即座に疼痛を軽減し、筋を活性化する。
この効果は、サポーターを装着する限り、持続する。
筋委縮の証拠は、見つからなかった。

[1]Nationale VersorgungsLeitlinie Kreuzschmerz. www.leitlinien.de/mdb/downloads/nvl/
kreuzschmerz/kreuzschmerz-1aufl-vers5-lang.pdf (last accessed on 15 March 2016).
[2] Brennan GP, Fritz JM, Hunter SJ, et al.: Identifying subgroups of patients with acute/
subacute “nonspecific” low back pain: results of a randomized clinical trial. Spine 2006; 31:
623–31 CrossRef MEDLINE
[3] O’Sullivan P: Diagnosis and classification of chronic low back disorder maladaptive
movement and motor control impairments a underlying mechanism. Man Ther 2005; 10:
242–55 CrossRef MEDLINE
[4] Schäfer A, Gärtner-Tschacher N, Schöttker-Königer T: Subgroup-specific treatment
of lumbar back pain. Presentation and quality criteria of the two classification systems.
Orthopäde 2013; 42: 90–9 CrossRef MEDLINE

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