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医師からみたコネクトTF導入の利点

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リハビリテーション

医師からみたコネクトTF導入の利点

-生活期義足ユーザーへのコネクトTFの試用経験-

JA三重厚生連 三重北医療センター 菰野厚生病院
医療法人(社団) 大和会 日下病院
整形外科 医師 加藤 弘明

2024-04-01

コネクトTFはオズール社が提供する、活動度の低い大腿切断者向けの調整可能な既製品ソケットです。断端形状に合わせてソケット高さ、周径、角度を調整でき、即時に装着することが可能です。
 
パシフィックニュースではこれまで、義肢装具士と理学療法士のそれぞれの立場から、コネクトTFの利点や課題、今後の可能性についてご報告いただきました。
 
>>2023年10月2日号 コネクトTFの事例紹介
>>2024年 1月5日号 理学療法士からみたコネクトTF導入の利点
 
今回は第39回日本義肢装具学会学術大会スポンサードセミナーでのご発表をもとに、菰野厚生病院 整形外科医師 加藤 弘明先生に、医師の立場からみたコネクトTF導入の利点についてご紹介いただきます。
 
これまでの記事では、主に新規切断者の評価用義足としてコネクトTFを使用していただきましたが、今回の症例では、生活期でも断端周径変化が大きく、ソケット適合に難渋される方へ試用した報告となります。
(パシフィックサプライ株式会社 新規事業開発推進部 義肢装具士 奥野 麻弥)

断端成熟後の周径変化による問題

下肢切断者の断端周径変化はさまざまな問題を引き起こします。一般的に切断直後から断端成熟までの期間の変化が最もダイナミックですが、断端成熟後も周径変化が続く患者様もいらっしゃいます。
 
2022年から2023年10月までで日下病院の義肢外来には、大腿義足ユーザー26名が来院されています。中には、ソケットが急にきつくなり入らなくなったという方がいらっしゃいます。断端の周径変化が原因で、この2年間に2回以上ソケット更新が必要だった方は3名(11.5%)おられました。
 
成熟後断端周径変化の要因としては、以下のようにさまざまなものが挙げられます。
①義足の装着・歩行
②月経周期
③透析周期
④体型変化
⑤活動量の変化・トレーニング
⑥合併症や治療による浮腫
 
これらによって引き起こされる問題には次のようなものがあり、患者様のADLの低下を防ぐためにもなんとか解決したいと思っています。
・義足の装着感低下
・ソケット内の圧力や摩擦の増加
・懸垂性低下によるピストン運動の発生
・皮膚損傷
・歩容の変化

断端の周径変化に対する対応

まずは断端袋を使用していただいています。それも合わなくなってくると、パッドを当てたり、ソケットを変形させたりしますが、最終的には作り直しということになります。
断端周径変化が大きく、そして繰り返す症例では、作り直しの直後は適合しているものの、時間が経つと周径が変化し不適合になることが発生します。いくら良いソケットを作っても結局は不適合となり、それ対して解決策が見いだせないという場面があります。
 
成熟後も断端周径が刻々と変化し、一般的な対応が追い付かない、このような場合には、ソケットが変化すれば対応できるかもしれません。ソケットが変わらないと限界があるとも言えます。

ソケットを変化させる戦略

ソケットを変化させる戦略としては、有窓ソケット(ベルクロ・BOA)や分割ソケットがあります。
 
有窓ソケットは以前より製作されており、窓のところを緩めたり締めたりすることで調節します。ですが製作方法が複雑で、調整幅もそれほど大きくありません。また、窓の位置を決めることも難しく、正しい調整部位で締められているかが評価し難いという問題もあります。
しかもこのソケットの場合は、製作し装着しないと、適合できているかどうかがわかりません。もし合わなかった場合は作り直しになってしまいます。複雑な製作法のため、修正も大変で時間がかかります。このタイプを処方したことはありますが、結局1年半くらいで作り直しとなってしまいました。



分割ソケットは、ソケットが合わない場合に義肢装具士が切り込みを入れて分割し、断端に合わせた後、ギプスを巻きつけて補強する方法です。しかし、強度の問題があり、これで長期間使用することは難しいです。
 
それを考えると、コネクトTFはもともと、高さ・角度・周径が調整可能なデザインになっているため、繰り返し起こる断端周径変化に対してソケットを変形させて対応できます。


 

生活期の大腿義足ユーザーへのコネクトTF試用症例

コネクトTFはソケットの調整ができるとのことで、断端成熟後も周径変化を起こすような方が装着した時に、痛みや違和感がないか、歩容への影響はどうかを確認するためトライアルしました。生活期で当院に通院中の大腿義足ユーザー3名にご協力いただき、日常使用しているソケットからコネクトTFに付け替え、リハ室を歩行し、歩容の確認と使用感を聞き取りました。


本来コネクトTFは低活動者向けではありますが、トライアルの目的と方法を鑑みた時に、多様な活動度の方を対象としても問題ないであろうと判断し進めました。

 

<結果>
①Aさん:30代 パラ陸上日本代表【結果:適合】
断端痩せでソケット不適合になり再製作中
普段坐骨支持タイプのソケットを使用しており、断端支持に慣れていないため、少し側屈が見られました。そのため歩行練習は必要になりますが、コネクトTF装着での痛みや緩さはなく、歩いた感覚は快適とのことでした。




②Bさん:40代 作業労働者【結果:適合】
断端痩せと太りを繰り返し、常時不適合状態
普段NUソケットを使用しておられるため、同じ断端支持タイプであるコネクトTFでの歩容はスムーズでした。また、断端がソケット内で遊ぶ感じや痛みもなく、ここ2年で一番適合している、このまま着けて帰りたいとの感想でした。



③Cさん:60代後半 主婦【結果:不適合】
断端痩せと太りを繰り返しており、常時不適合状態
普段IRCソケットを着用しており、坐骨支持に過度に頼った歩容をしておられるため、断端支持の不安定な感じへの恐怖感を払拭できませんでした。きつく締めると断端に疼痛がありうまく体重がかけられず、緩いと断端がソケット内で不安定になり、また断端末がソケットに当たって痛みを感じるとのことで、不適合となりました。



 
<考察>
今回の症例では2名が適合、1名が不適合という結果でした。不適合の方は、坐骨支持がないことが原因であり、NUソケットが合わない方には、コネクトTFは合わせにくいかもしれないという印象を受けました。
 
装着や調整についてですが、日常使用しておられるソケットからコネクトTFに付け替えての調整時間は10~20分程度でした。ただ、最初からコネクトTFを装着していれば、ソケットサイズの調整は数分で行えます。従来のソケットの調整の場合では、断端袋で数分、パッド調整は5~10分ですが、調整できる幅には限界があります。ソケットを削ったり変形させたりするのも、10~15分程度かもしれませんが、病院ではできないことがあります。しかも義肢装具士の来院に合わせる必要もあるため、ソケット調整には数週間かかる場合もあります。ソケットの作り直しとなると、申請期間も含めると数か月かかることもあります。
コネクトTFであれば数分で、しかも繰り返し調整ができます。断端周径変化で困っている症例に対して時間的利点があると言えます。


 

コネクトTF臨床での運用案

今回の症例を踏まえて、コネクトTFは臨床現場では次のように運用できるのではないかと考えます。
①仮義足のソケット・予備義足のソケット
転院日(リハビリ開始日)から歩行訓練が可能となります。これにより早期の断端周径変化に即時的に対応ができます。また、本義足の製作期間や、引き上げての修理期間中の予備義足としても使用することが可能です。
 
②本義足のソケット
生活期の人で断端周径変化が大きく、繰り返し不適合になる方に対して本義足として使用することができます。
 
③評価用ソケット
これまでは義足が適応するかどうか、ソケットを作らないと始められませんでした。ですが、コネクトTFは義足の適用について試して評価ができます。評価用装具のように、装着をして義足の感覚を得られることにはメリットがあります。

今回の試着に対する問題点

今回は、病院内で1回限りの試用であったため、確認できたことは「採型・製作をしていないが、装着して歩行が可能である」「即時的に適合調整ができる」という点です。長期運用の場合はもっとさまざまなことを確認する必要があります。例えば、調整幅(周径・形状)や耐用年数、また、メーカー推奨は低活動者向けですがどこまで活動レベルをあげられるか。ほかにも、今回、断端支持困難な症例は不適合であったため、坐骨支持のオプションがあったらどうなるか、またコネクトTFのメカニック外観が受け入れられない方への対応などです。

最後に

今回、生活期の大腿義足ユーザー3名にコネクトTFを装着し歩容の確認と使用感を聞きましたが、3名中2名はその場で疼痛なく歩行ができました。断端周径変化が大きく適合困難な症例にも適合したため、コネクトTFはこのような症例の問題解決の一案となり得ることがわかりました。
コネクトTFには可能性を感じます。
ソケットをユーザー様に合わせる、というのは理にかなっていると思います。先述した坐骨支持オプションの追加や長期運用での疑問などが解決し、このジャンルが発展してくるといいなと思います。

執筆者プロフィール

加藤 弘明 

 
【略歴】
平成16年高知医科大学卒業
三重県立総合医療センターで初期研修
三重大学附属病院整形外科に入局、県内の病院へ勤務
平成24年三重北医療センター菰野厚生病院に勤務
 
平成22年より日下病院で週1回の義肢専門外来を行っている。
平成24年より済生会明和病院整形外科非常勤医師
令和4年より三重膠原病リウマチ痛風クリニック非常勤医
 
所属学会(日本整形外科学会以外)
日本義肢装具学会 編集委員会幹事(令和4年10月~)
 
資格
日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医
 
社会活動
平成24年~切断者スポーツチーム大和鉄脚走行会(やまとてっきゃくそうこうかい)を主宰
平成25年~日本パラ陸上連盟チームドクター

製品担当者より

「生活期に断端周径変化で苦労されるユーザー様に、コネクトTFはその問題解決の一案になり得る」、加藤先生のお言葉に、コネクトTFの可能性を感じました。また、仮義足でコネクトTFを選択することで、本義足製作中や義足を引き上げての修理期間などに、コネクトTFが予備義足として活用できるという点は、患者様はもちろんのこと、リハビリを担当される医師や理学療法士の方々にも大きなメリットであろうと思いました。
 
コネクトTFは義肢装具士による調整が必要です。導入をご希望される方はご担当の義肢装具士にご相談いただきますよう、お願いいたします。またコネクトTFの詳細は、製品サイトおよび弊社の教育サービス「Kawamuraアカデミー」でも説明しております。ぜひご確認ください。

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