検索

Close

検索したいキーワードを入力してサイト内検索をする

パシフィックニュース

震災特集 5

震災特集

震災特集  5

震災特集 5

宮城県東部保健福祉事務所 武田 輝也 粟津 正貴 (現 仙台保健福祉事務所)

2012-07-01

1冊の記録集が完成しました。被災地石巻地域のリハビリ職による東日本大震災記録集
『石巻地域のリハビリ職 それぞれの震災、そして新たな希望』

発刊後、多くの反響が寄せられています。特にリハビリテーション専門職によるありのままの発信が読み手の共感をよんでおります。今回の震災特集は、この記録集を立案された石巻保健所の武田氏・粟津氏に出版に至るまでの経緯について執筆を依頼いたしました。

この記録集が後世への教訓として生かされ、教本として語り継がれていくことを切に望みます。3・11が悲しい記憶ではなく新しい未来に向けて歩き始めた日となるように。
震災は過去形ではなく、未だ進行形なのです。

東日本大震災から1年が経過し、2度目の夏を迎えようとしています。宮城県東部保健福祉事務所(石巻保健所)の担当地域は、宮城県の石巻市、東松島市、女川町で構成され、全て沿岸に面しており、報道にあるように津波の被害は甚大な地域です。プレハブの応急仮設住宅は186団地に約1万戸が建設されており、中には2000戸を超える大団地もあります。現在は、ようやく震災廃棄物の処理が本格稼働し、さらに復興公営住宅等の建設が始まろうとしています。

「大震災」の被害と復興過程を記録するということは、様々な立場や機関、地域で取り組まれています。どの記録をとっても、その目的や内容も数々あり、被災地で起こっていた事実は一つでも、捉え方は立場により大きく異なることに驚かされることもあります。

その中でも、この記録集は、石巻地域のリハビリテーション専門職がそれぞれの被災地の現場で経験したことをありのままに、寄稿いただいたものをまとめています

記録集作成のきっかけ

震災から半年後の平成23年10月23日(日)に石巻管内の医療機関や施設等に勤務するリハビリテーション専門職による石巻地域リハビリテーション震災復興連絡会が開催されました。連絡会は、震災後初めて石巻地域の医療機関、保健福祉施設に勤務するリハビリ専門職が一堂に集まり、震災直後からの約半年間を振り返って、状況を報告し合う機会でした。

連絡会で報告された震災直後からの各自の取り組みは、被災者として、また医療者として、経験したことのない様々な困難に悪戦苦闘の内容でした。この連絡会の開催を契機に、震災の経験とそこから浮き彫りになった点をまずは地域で共有することを目指して、リハビリ職の記録集の作成が開始されました。

記録集作成の趣旨は、業務上の是非を問うのでなく、一人ひとりの想いを書きとめるものとしています。主に震災直後の取り組みについて書かれているものが多いのですが、約10か月が経過し復興過程における経験、今後の災害への備え、復興に向けた希望などについても加えられ、被災した立場だからこその問題提起や提言をいただいています。

執筆者の方々には、大変精神的負担もある厳しい取り組みのお願いでしたが、御協力いただいているものです。

それぞれの想い

編集を担当した者として、記録集を改めて読み通して、強く印象づけられる点をあげたいと思います。

一つは、組織人としてどのように、患者や住民を守り支援したか。
特に、災害発生から数日までの超急性期は自衛隊や消防、医療救護チームといった組織的な救助活動も動きだすには時間がかかり、自助(自分で自分の身を守ること)や共助(近隣や仲間の助け)が中心になります。今回は、災害拠点病院を除くと外部からの支援がない状態が長期化し、被災した医療機関では組織を守るための業務が優先された状況でした。多くが自分の職域とは関係がないか、職域を超えた仕事を求められていました。時には、専門職としての苦悩もありましたが、目の前の患者、被災者が必要とすることを提供する専門性にこだわらない柔軟な姿勢が求められていました。

二つは、被災者として、人として家族や自らをどう支えたか。
大切な肉親やすまい、職場を失いながらも、組織人として活動し、さらに家族を守らなければならないため、葛藤を抱えた方も多い状況でした。自身が被災した中、慣れない業務の上、使命感からオーバーワークになり、心的なストレスもたまりやすい状況にありました。多くが身体的にも、精神的にも極限状態を経験する中で、価値観を変えた方も多い状況でした。

三つは、決して、あきらめないリハビリテーションスピリッツ。地域の復興への想い。
特にリハビリテーションは生活に密着したもので、緊急対応や復旧が一段落した後の復興過程が進むにつれて、重要性がさらに増してくると感じている方は多いと思われました。大切な人や住み慣れた家、すまいの地盤までもが一瞬にして失われた中でも、これまでの個人や職種、機関等を超えた広い視点で、地域の復興へ取り組もうという想いがつづられています。

震災記録集

さいごに

東日本大震災以降、被災地のみならず、いつまた大災害が起こってもおかしくないという漠然とした思いに多くの人がとらわれるようになったのではないでしょうか。

最近「減災」という言葉に触れることが多くなりました。「減災」とは、災害が発生してもできるだけ被害が少なくなるように、来る災害と向き合い備えることをいいます。日ごろから、訓練やマニュアル作成は全国各地で行われていると思います。自身が被災して改めて感じたのは、本当に減災につなげるためには、訓練やマニュアルには、「リアル」さが必要だったということです。

この記録集は、個人を中心とした災害体験を募ったことで、当初の予測をはるかに超えて、その時何が起こっていたのか、どう感じたのか、業務に捉われない「リアル」な状況が書かれています。

記録集は、当初は石巻地域の記録としてのみ共有することを想定していましたが、執筆者の方々に御了解頂き、ホームページに掲載しております。各地での減災対応に資するところあればと願っている次第です。
※本記録集の出版にあたっては、パシフィックサプライ社に協力を頂き完成に至りました。この場を借りて御礼を申し上げます。

関連情報